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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

スラムダンク夫論

スラムダンクに関して、一つ不思議なことがあってね」
私が言うと、セキゼキさん(仮名)がちょっと嫌そうに顔をしかめました。
「なんで今更スラムダンクなんだよ……」
「いやいや、今更だからこその疑問ですよ。つまりね、スラムダンク連載中って、けっこう流川ファンが多かった気がするの」
「三井派も多くなかったっけ?」
「ミッチーはほんとにいいよね! 私も断然ミッチー派ですけど! でも当時は流川派が多かった」
「それで?」
「ところがこの年になって、スラムダンク懐古話になると、三井派が圧倒的多数なんだよ。スラムダンク好きの女性はオール三井好きだと錯覚しそうになる。この比率の変化は一体なんだ」
「そういえば、おれの周りも三井派がだんだん増えた気がする」
「仮説は二つ。年をとると共に嗜好が変わり、流川派の多くが三井派に流れたというものが一番目。流川派は既にスラムダンクのことなんて忘れて生きているが、三井派は未だにスラムダンクについて何かを語れるような、謎の熱量を持っているというのが二番目だ」
「それってただシロイが後者なだけなんじゃ……」
というわけで未だに熱さめやらない私は本日、スラムダンク夫論について書きます。
スラムダンクで彼氏選ぶなら誰がいいー?」
という二十年前のオタクより女子がしていたアタマワルソウな雑談を大人っぽくアレンジし、更に「スラムダンク夫論(すらむだんくおっとろん)」とそれらしく呼ぶことで、重みを持たせようとしています。成功してますか?

一人目「仙道彰

「年と共に嗜好が変わるっていうか、キャラに対する見方が変わってくるのは確かですよ。ミッチーのあの弱さと強さを持ち合わせたかんじは素敵だと相変わらず思うけど、結婚はしたくないなあと思っちゃうよね」
「そっかなー、そりゃあちょっぴり情緒不安定で逆恨みしがちで暴力的ではあるけど、ミッチーって夫として悪くないよたぶん」
「いやいやいや! 今ミッチーがいかに夫に向いてないか深く実感しちゃったね逆にさ! フォローの意味がわからないね!」
「じゃあシロイが思う夫向きキャラって誰よ?」
「仙道。とにかく人柄が穏やかそう。すごい信頼感と安定感があるし」
「ありえない! おれ仙道は夫として絶対イヤ!」
「なにそれ、どうしてそこまで否定を……」
「仙道ってちょうマイペース男じゃん。考えてみろよ、あの田岡監督の練習をサボって涼しい顔で釣りに行けるんだぞアイツは!」
「い、言われてみれば……私があの立場だったら、確かに怖くてサボれない! つか仙道はなぜできるのか不思議になってきた!」
「ぱっと見は真面目なのに、ふらっとそういうことをするタイプって、一緒に暮らすとたぶん時々とんでもないぞ。マイペース男だから、強く注意しても糠に釘っぽいし」
(てことはマイペース仙道が夫になったとしたら……)
私は想像してみました。

「おふくろのプレゼントは自分で用意したいとか言ってたのになんで何にも買ってないのさ! 道が混んでるから途中で買ってたら遅刻しちゃうよ! 私は早めについて支度手伝わなきゃなのに! ああもうどうすんのさあああああ!!!」
「大丈夫」
「はっ?」
「まだ慌てるような時間じゃない」


「……きついわー確かにきついわー仙道。殴ってしまいたい衝動に駆られるわ」
「だろ?」

二人目「赤木剛憲

「やっぱりここは赤木かな」
「うっそなんで赤木? おれ赤木は絶対ない」
「なんでさ? 彼、バスケだけじゃなく勉強もできて優秀だしね。真面目だし、仕事もできそう。尊敬できるよねー」
「そうねえ、立派だねえ。だからこそ一緒に暮らしたら、だいぶ鬱陶しいだろうね!」
「え……?」
「ゴリって意志が強いよね。それは美点だ。だけどさー、むちゃくちゃに意志が強くておまけに厳格な人と築く家庭って、意志薄弱で甘ったれな一般人からすると、息が抜けなくて辛いんじゃないかねー」
「そ、そういえばゴリのそういうところを嫌がって木暮以外の部員がやめていったっていう描写がありました」
「読者はあのシーン、ゴリに同情して、やめてったやつらに腹立てたりするわけだけど、現実の人間の大半はね、ゴリじゃなくてその他部員のほうなんだよ! おれたちはみんな、ゴリについていけない人間なんです!」
「で、でも私だってがんばればゴリについていけるかもしないし……」
私は想像してみました。

「まさか会社に行くつもり? ムチャですよ! 39度も熱が出て。さっきよりもドンドン上がってきてるわ! インフルエンザかもしれないのよ!」
「いいからドーピングだ!!」


「……なんか仁王立ちしてユンケル飲みながら出社するゴリが見えた」
「いるよなそういう人。周囲の軟弱な同僚からすると、体調悪いなら休んでくれよって思っちゃうんだけど」
「確かに立派だけど、結婚は大変そうな気がするわ」
「だろ?」

三人目「木暮公延

「じゃあ、メガネ君こと木暮! これは絶対に間違いのない人格者! 彼と築く家庭のハッピーさに疑いはないね!」
「ふうううーん、まあ、そう思う人もいるだろうねー」
「なんだその反応。さすがに木暮には問題ないだろう。スラムダンク界トップレベルの性格の良さでしょ!」
「そうねー、だからこそオレはやだなー」
「意味分かんねえ。どういうこと?」
「木暮は確かに人格者だよ間違いなく。でもね、おれ自身はそこまで完璧な人格持ってないの」
「まー私も木暮ほどの人格は持ってないなー」
「てことはね、木暮とおれたちが喧嘩になったとき、間違っているのは常にこっちってことだよ」
「!?」
「木暮とシロイが喧嘩すれば、みんな思うだろうね。あんなに性格のいい木暮さんが悪いわけない、きっとシロイが悪いんだって」
「それって、もしも木暮がデマを広めても、私はそれに対抗できないってこと?」
「まあ、木暮はデマ広めるような酷いやつではないけどね。でもさ、木暮は悪くなくて、自分が悪いことはじゅうぶんわかってて、それでも喧嘩になっちゃう。そういう図って想像できない?」
「できる……だって人間て八つ当たりとかする生き物だもの……相手が悪くなくてもいらついちゃうときあるし……あああごめんなさいごめんなさいいい」
「別にいいんだよ人間なんだから、それはお互いさまなんだよフツー。大事なのは許し合うことだろ。でもさ、木暮みたいな人格者が相手だと話は違う。おれたちは許される一方になるんだ!」
「えええ、なんかそれやばそう……」
「そしてたまに木暮が切れると、彼の怒りはあまりにも正当なものだから、こっちはぐうの音も出ないんだ!」

「結婚式多すぎ、参加者かぶってるし、もう着ていく服がないなー。なのでフォーマルドレスもう一着買うよ。家計から出しても問題ないよね?」
「あれ? この間ワンピース買った時に、着回しするからもう当分フォーマルは買わない、買うとしたら小遣いからって約束したよね」
「うるさいうるさい、コサージュとバッグと靴も買うぜチクショー」
「いい加減にしろ! 何が着まわしだ、何が小物使いだ! 何がコサージュとストールで印象を変えるから一着のワンピースでやりくりできるだ!! お前は根性なしだ、シロイ……ただの根性なしじゃねぇか。根性なしのくせに何が着まわしだっ! 夢見させるようなこと言うなあっ!」


「……なぜか今までの中で一番ずしっときた」
「だろ? 品行方正、温厚篤実な木暮と暮らすには、こちらもそれなりの人間じゃないとダメなんだよ」

四人目「魚住純とその他」

「逆にきくけど、君は誰が夫にいいと思うわけ?」
「花形かな。彼は人に添うことを知っているからね。エースとか天才ってのは、セルフィッシュな要素も必要だから、逆に夫としては難しい相手だろう。花形はチームの柱というエース的な一面がありつつも、上に藤真を抱いていた経験から、自分勝手はなさそうだ。忠実さと献身と頼りがいを併せ持つ男であろう」
「おおおおなるほど! そっかー、流川とか沢北みたいなエースタイプは、確かに父性的な雰囲気を欠くもんね」
「あと、これはあんまり根拠ないけど、陵南のあの人もいい夫になりそう。誰だっけ、出番少ないせいか、名前が出てこないな」
「フクちゃん?」
「全然違う! つかフクちゃんは繊細すぎて一緒に暮らすの辛いだろむしろ! 三年だよ、ちょっと地味めな」
「池上! ディフェンスに定評のある池上! 確かに人柄その他よくわかんないけど、家庭もしっかり守りそう! そしたら翔陽の長谷川一志とかも堅実そうじゃない?」
「あいつはダメだろなんか……執念深いし、安請け合いしそうだし、無駄に好戦的ぽいし。なまじ見た目が無害そうだから周囲も油断しちゃって、思わぬ落とし穴にはまりそう」
「てことは夫に向いてるベストキャラは花形満選手でよろしいか?」
「大物を一人忘れてるぞ。魚住だ」
「魚住……? しかしやつには赤木と同じ問題があるのでは?」
「浅はかだなシロイ。赤木と魚住が似ているのは雰囲気とチーム内のポジションだけだ。性格は全然違うのが、一年生当時の話を見れば明らかだ」
「言われてみれば赤木は『やめたいと思ったことは一度もない』と言いきってるけど、一年のときの魚住は弱気だよね。辞めますとか言ってるし、泣いてるし」
武田鉄矢も言ってるだろう、人は悲しみが多い方が人に優しくできるって! 魚住は挫折や弱さを知って、しかもそれを乗り越えてきた人間なんだよ! ああいう男は、間違いなく強いだけでなく優しい!」
「おお!」
「板前修業とか始めてるのもポイント高い! 先のわからない現代、手に職もってるのは心強いよな!」
「おおお!」
「コックや板前は家では料理しない場合も多いっていうけど、コートでかつらむきしちゃうような魚住なら、きっと家でも頼めばなんか作ってくれる!」
「かつらむきの件は関係なさそうだけど、確かに快く作ってくれそうな優しさを感じる。魚住の味噌汁とか、なんかすげー旨そうだな!」
「というわけで夫向きキャラナンバーワンは魚住純というのが、おれの結論だ」
「なるほどねー」
「まあ、個人的には魚住とは絶対結婚したくないが……」
「ここまでオススメしておいて何言ってんの!? 自分の言葉に責任持ちなよ! 一体君はスラムダンクの誰となら結婚したいっていうのさ?」
「彩子さん」
「えっ」
「彩子さん」
「えっ」
「……ていうか、驚くとこじゃないよねそこ?」


言われてみればセキゼキさんはヘテロセクシャルな男性でした。途中から忘れてた。

というわけで

あけましておめでとうございます。
新年一発目の更新がこんなんでいいのかなと思いましたが、振り返ってみると2010年の年明けもゲームの感想だったことに気づきましたので、もうこれで通します。