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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

泣くほど受験勉強が嫌か?

この間、「気がついたら中学三年生に戻っている夢」を見ました。


目を覚ますと、知らない部屋にいる……と思えばそれは昔住んでいた部屋である。
あの家はもう無いはず、壊されたのだから。おかしい。と思いながらふと新聞を手に取ると日付が古い。
鏡を見ると、そこにいるのは幼い自分。
家族も友人も、十年ちょっとぶんだけ、若い。
「嘘だろ? これは夢か?」
と戸惑うのですが、そのまま中学三年生としての日常が続いてしまい、
「夢じゃないんだ……」
と納得せざるを得ない。


「もしかすると今までの人生が夢だったのかもしれない。でもリアルな夢だったなあ」
そう思いながら生活するが、そのうち学校で教えられる事がすべて、自分が既に知っている知識であることに気付く。ニュースで報じられる出来事も全て、知っている。
「じゃあやっぱりあの人生は夢じゃなかったのか? もしも既にある知識や大人としての判断力を上手く使うことができれば、ものすごく上手に世渡りできるかも」
と最初はほくそえむ私。
「手始めに私が高校一年生のときに死んでしまう予定のリバー・フェニックスをなんとか救えないだろうか。無理だな。でも高三の冬に事故死した同級生は救えるかもしれない」
などと思いをめぐらせ、そして気付いてしまう。


阪神大震災911もまだ起きていない世界。
たったひとり、これからそれが起きることを知っている私。
私がこれからどう動くかで、世界は911を回避できるのかもしれない。その結果、愚かしい戦争をひとつ、未然に防ぐことができるのかもしれない。
でも自分はただの平凡な人間に過ぎず、どうすればいいのか判らない。だがこのことに気付いた以上、手をこまねいているわけにはいかない。


とりあえず受験勉強頑張らないと。英語力を伸ばして、アメリカに留学できれば、少し近づけるような……受験勉強。
忘れてた、あたしこれからもう一度受験勉強しなきゃいけないの? しかも前回よりもがんばらなきゃいけないの?
受験だけじゃない。中間テストも期末テストも業者テストもやらなきゃいけない。
自由は奪われる。お金もほんの少ししか使えない。
これから十年以上、一度読んだ本ばかりが出版されることになり、聞いたことのある音楽しか聞くことできない。映画も、マンガも、ゲームもすべてそうだ。なにもかもそうだ。


祖母と伯父と祖父をもう一度、喪うことになる。
健在な祖父はあと数年でアルツハイマーを発症するだろう。


周囲にいる友人たちは、自分よりも精神的に幼い。頼りにすることはできない。だが彼らを子ども扱いするわけにはいかないのだ。表面上は対等なのだから。


これから自分が陥る苦境を、誰にも打ち明けることができない。
911を回避したいなどと誰かに打ち明けたとたんに、病院に入れられるだろうから。


そこまで思いが至った瞬間、私は耐え切れず泣き出しました。
「これは酷い。私にはこんな人生は乗り切れない。戻りたい。戻してくれ」
すると誰かがため息をつくのが聞こえたような気がしました。
仕方ない、君は不適格だ、と呟かれたような気がしました。


次の瞬間、私は普段通りのベッドで目を覚ましていました。
ああ夢だったんだよかった、と思いながら。
けれどその一方で、「私は不適格だったから、こちらに戻されたのだ」という思いが脳裏をよぎりました。


私よりももっと立派なひとが「あの頃の世界に戻された」のであれば、世界は911とそれに続く悲しい戦争を回避できたのだろうか。
願わくば次に「戻される」のが、私よりも強靱で賢明で意志の強固なひとでありますように。
そんなことを考えながら私は、満員電車に揺られました。