モシノセ・カイ(仮名)ちゃんの話をします。
クルハス・ヤミ(仮名)さんと縁が切れて一月と経たないうちに、私があらたに縁を結んだのがカイちゃんで、彼女もいろいろと思い出深い女性だからです。
とはいえ。
カイちゃんの話をするのは難しくてなんかいろいろ長くなっちゃってまして、けっこう困ってます。
ええと、いつものことながらこの話も、諸々の事情をかんがみまして、だいぶ事実を改変しております。
フィクションと思ってお読みください。
あなたが実際に似た話を知っているとしても、それはおそらく偶然の一致であり、この話とは無関係です。
スリーピング・ドールガール
カイちゃんは一歳下の女の子です。現在私はかなりイイトシになってしまってますから、既にカイちゃんは女の子ではないわけなんですが、出会った当時はまだ十八歳でしたから、いまだに心の中では、彼女は女の子のままなんです。
肩までのストレートヘアはサラサラでつややかな黒。
色白で、目鼻立ちはこじんまりとまとまっていて、薄い唇がぽっちりとピンクで。
(お人形さんみたいな子だな)
第一印象でそんな風に思ったのを覚えています。
ビスクドールとか球体関節人形とかじゃなくて、木目込み人形とか市松さんなんかを思わせる顔立ち。
そこにきゃしゃで薄い体つきが合わさって、カイちゃんは実際の年齢よりも幼く見え、ますます人形めいた印象を与えるのでした。
当時私の所属していたサークルは悲しいほどに男女比が偏っていまして、みなそのことを「よくない。とてもよくない」と思っていました。
一人でも多くの新入生女子を迎え入れ、ひたすら汗臭い空間に、高級脂肪酸と安息香酸エストラジオールを混ぜ合わせたような甘やかな香りをもたらしたいと、そのように願っていたのです。
そんなとき見学に現れたのがモシノセ・カイちゃん。
人なつこくててやる気があって、初日からとても熱心に活動に加わる、夢のような新入生女子です。
サークルは一気に祝祭のムードに包まれ、
「むさくるしい男が原因でカイちゃんが我々を忌避するような事があってはならない。その点同性同士であれば間違いが発生することも少ないであろう」
ということで、なんとなく私とカイちゃんは、最初から二人組で行動することが多くなったんでした。
カイちゃんは、びっくりするほどのいい子でした。
誰もやりたがらない仕事があると、「やります」と手を挙げる子でした。
誰かが困っているといち早くその気配を察して駆けつける子であり。
いろんなものを気前よく親切に振る舞う子でもありました。
だから最初は、とても嬉しかったのです。
後輩って存在が新鮮でしたし、カイちゃんは私をけっこう慕ってくれていたので、そのことが誇らしくて。
「シロイさんみたいな先輩がいてくれてよかった! わたしこのサークルに入りますー」
カイちゃんがかわいらしく語尾を伸ばし、甘えるような口調で言った時なんて、胸がじーんとしちゃったりしてね。
まさかね。
五月の大型連休を迎える頃には、自分がカイちゃんを持て余し始めるなんてこと、全然想像してませんでしたよね……
新入生歓迎イベントでボーリングに行った時、まず歯車が狂い始めました。
「わたし、シロイさんと一緒のレーンでやりたいです」
とカイちゃんは言い、そういう発言の一つ一つが嬉しくて、最初のうちは私もはしゃいでいたんですけれども。
「シロイさん、おトイレいきたくないですか?」
「ううん、別に」
深く考えず連れトイレの誘いを断ったら、カイちゃんの顔色が変わったので、びっくりしちゃいましたよね。
「いいからきてくださいよ、シロイさんに相談したいことがあるんですよー」
私の服を引っ張るカイちゃんの手には、にこやかな表情とは裏腹に、意外なほどの力が込められており。
「なんで断るんですかありえなくないですかどういうつもりですか」
ぼそぼそと耳元で囁かれた時には、私はけっこう度肝を抜かれていました。
後ろの方でサークルの男性メンバーたちが
「女同士、すっかり仲良くなってるな!」
「この調子で女性メンバーが増えれば、更に女の子が入ってくれるかもな!」
などと嬉しそうに話し合っている声を背中で聞きながら、引きずられていく私。
「で、誰なんです? なんで隠そうとするんです?」
カイちゃんに尋ねられ、私はぽかんと口をあけました。
「何の話?」
「シロイさん、あの中に付き合っている人いますよね? 男ばっかりのサークルで一年過ごしたのに誰とも付き合ってないとか、そんなことありえませんよね?」
「えっ」
「えっ」
「……いや、それがその」
「まさか。まさか誰もいないんですか? ありえない、なにしてたんですか一年」
「か、格好悪いふられ方などを、たしなんでおりました……」
カイちゃんは屠殺場にひかれていく豚を見るような、あわれみのこもった視線を、私に投げ掛けました。
「好きな人は?」
「はい?」
「あの中にいないんですかシロイさん。ああいいです、いないっぽいですね、いるかんじじゃなかったですもんね。うん、ならいいです。話が早い」
にっこり。
「わたしは彼氏が欲しいんです。それで、今はガルト(仮名)さんが一番いいなあと思っててー。協力してくれますよねー?」
というような流れがあって。
気がつけば私は、カイちゃんの恋愛についてしょっちゅう相談を受けることになりました。
いや別に嫌いじゃないですよコイバナ。ていうかむしろ大好物かもしれませんよコイバナ。友達のコイバナとか、けっこう身を乗り出して聞いちゃいますよ。
なんて。
思っていたのに。
「なんかー、みなさんが優しくしてくださるのは嬉しいんですけどー、ちょっと困りますよねー、はしゃぎすぎっていうかー、女に対して飢えすぎじゃないとか思ってー。
だってー、ヨルダ(仮名)さんとかーヤアン(仮名)さんとかー、すごく優しいですけどー、けっこう気が利くとは思いますけどー、いくら優しくされても顔がねえ? ないじゃないですかー、美意識が許さないでしょーあの手はー。でもイイヒトではあるんですよねー、だからーやっぱり切り捨てるには惜しいですよねー。
○さんとかはー、顔はいいからー、ほんとにいいからー、アリかなーと思ってー、一緒にでかけたらー、ちょっと自己中? 全然気が回らないっていうか、トークもつまんないし? もう全然ナシでー。
なのでー、やっぱりー、一番はガルトさんなんですよー。顔はー、そりゃ○さんのほうがいいけどー、でもガルトさんくらいの顔ならギリセーフだし? けっこう優しいし?
あーでもなんか決め手に欠けるっていうかー、それでいいのかって思いますよねー。結局みんなイマイチっていうかー、妥協するしかないのかなー。どう思います?」
(この子のコイバナすっげーきつい! コレ聞いてると私の精神がマッハでやばいです! つかこれむしろコイバナというより悪口というか誹謗中傷のたぐいでは)
内容もさることながら、私を怯えさせたのは、カイちゃんが見せたギャップの大きさでした。
男性陣は誰ひとり、自分がこんなふうに情け容赦なく切り捨てられていることに、気づいていないでしょう。
というか、私だって気づいてなかった。カイちゃんがにこやかな笑顔の裏で、こんなことを考えていたとは。
(ううう、やだやだ、今まで仲良くやってきたサークル仲間、自分が好きだと思っている人たちへの悪口には加担したくない)
私はその時、男性陣一人一人を擁護し、カイちゃんに反論したい気持ちになったのですが。
(そういうわけにもいかないよなあ……)
カイちゃんのコイバナはすべて、
「いまじぶんはものすごくモテモテである」
という前提で成立しているわけです。
なので、
「カイちゃん、ごめんね、誤解があるみたい。たとえば、すてきな顔の○さんなんだけど。彼と一緒に出かけたいって言ったの、カイちゃんからだったよね? しかもわりと強引だったとか? ○さん悩んでたよ、彼女に浮気と思われたら嫌だ、でもせっかくサークルに入ってくれそうな新入生にこんなことで恥かかせたくないしって。だから出先でもイマイチな態度だったんじゃないかな? 他の男の人たちだって、みんなそこまで飢えてるわけじゃない気がするけど」
とか反論したらものすごく残酷でしょう、かなり傷つくでしょう。
かといって。
カイちゃんの誤解を誤解のまま放置するのもそれはそれで問題がありそうだし、どうすればいいのだろう、悩みはどんどん深まっていくばかりなのでした。
ある日の夕方。
「うわ、カイちゃん? めずらしーね、うちに電話なんて」
「あの、これからシロイさんの家に行ってもいいですか。相談したいことがあって」
「これから!? ごめん、いつもならいいんだけど、今日ちょっと他に約束あって」
「ひどい。だってわたし、どうしても今日シロイさんとお話がしたいんですよ? 他の約束ってなんなんですか?」
「えーとね、飲み会のときだけなんだけど、顔出してるサークルが他にもあってさ。今日は新歓イベントあるから来いって、言われてるのね。お世話になってる先輩もいるし」
「なら、わたしも、その飲み会に行きます」
「えっ」
「新歓イベントなんですよね? だったらシロイさんが一年生を一人連れてきたってことにすれば、そのサークルの方々も納得するでしょうし」
「それはそうかもしんないけど……何のサークルかも知らないのに顔出していいの? これからも色々誘われたりするよ?」
「問題ありません。シロイさんがいらっしゃるサークルなら、きっとみなさん良い方でしょうし。わたし、シロイさんが顔を出してる他の場所に、興味があります」
てな具合で押し切られ、私はそのまま、カイちゃんと一緒に飲み会に向かうことになったのでした。
居酒屋に到着後。
「一年生を連れてくるとは、でかしたぞシロイ!」
などと誉められつつも、私の心は晴れません。
ニコニコしながらまわりの先輩と話しているカイちゃんから私はそうっと離れました。
(そういえば相談したいことってなんだったんだろう? あとでその話になるかもな)
なんとなく気になって私は、飲み会の間もちらちらとカイちゃんの様子をうかがい、その結果、あることに気付きました。
(ひええええ、なんだコレエ)
カイちゃんはまず、自分と同じ新入生とは、ほとんど口を聞きません。まるで目に映らないみたいに。
先輩後輩を問わず、女性も基本的には無視。
男性で先輩であっても、存在感の薄い人、地味な人などは、わりと眼中に入っていないかんじであり。
(相手によって態度を変えすぎ! うちのサークルは男ばっかりだから、異性の前だと豹変するタイプだってことに気付かなかった!)
(付き合いがメリットにならなそうな人は切り捨ててる? んー、でもちょっと違うような)
たとえばその日、そこにはとても整った顔立ちの男性がいたのですが、その先輩にカイちゃんは、まったく関心を示しません。
(私が最初に紹介するまでは、普通にテンションあがってたのになー。その後態度変わったよなー)
(わかるけどね。あの先輩は人当たりがおそろしくわるくて仏頂面で、さっきも愛想なかったからな。あれで嫌になっちゃったんだろうな)
そのあたりでだんだん私は、カイちゃんがどんな人間を好むのか、わかったような気がしました。
(カイちゃんはとにかく、ちやほやされたり、優しくされたりしたいんだね。注目と関心と好意を、たっぷりくれる人がいいんだ)
そう考えると、カイちゃんが私に懐いている理由もわかるような気がします。
(ちやほやしてくれる同性って、下心をあんまり警戒しないで済むぶん、男相手よりずっと気楽だしなあ。それに特定の男性と仲良くなりすぎると、他の男性の好意が減じちゃうかもしれないけど、私が相手ならその心配もないわけだ)
(やだなー)
(ちやほやされたい、優しくされたいってのは、誰もが持ってる欲求だけど、だからって……ちやほやしてくれない人を無視するってのは、いくらなんでもダメだろ)
(うー、だめだ。もう無理)
(これから私、彼女と今までみたいには付き合えない。そんなことをしたら、ちやほやをくれない人間は無視っていう行動を、肯定することになる気がする)
(距離置くしかないなー。様子見てちょっとずつ、離れる。難しいかな?)
(あーでも考えてみれば、カイちゃんもしばらくすりゃ、私からのちやほやがなくなったことに気づくだろうし? そうなれば自然と向こうから離れてくれるだろう)
そこまで考えて私は、やっと少し、肩の荷を下ろしたような気持ちになりました。
ホワイトナイト・ライジング
それからしばらくして私は、サークルの有志数人とカレーパーティを開きました。
スパイスたっぷりチキンカレーができあがって、楽しく食べ始めた時点で、会場となった友人のアパートに電話がかかってきて。
「シロイさん、相談があるんで今からそちらに行っていいですか」とか言われて。
やがて現れたカイちゃんは、
「お食事会だとお聞きしてたので。みなさんで召し上がってください」
涼しげなゼリーの詰め合わせを持参して、皆に配りました。
「さすが気が利くなあ」
と喜ぶ皆を横目に、カイちゃん自身はカレーにもゼリーにもほとんど手をつけません。
やがて食後、『ユージュアルサスペクツ』鑑賞会が開かれる段階になったら、
「シロイさん、もう帰りましょう。それでわたしを、今晩泊めて、お話をきいてください。そんな映画、ほんとにみたいですか?」
とカイちゃんが言い、場の雰囲気が気まずく変化しました。
正直ちょっとむっとしたけど、ゼリーとか美味しくいただいちゃったばっかだから言い返すのもちょっとなあ、みたいなかんじで、黙りがちになる面々。
「そう言わないでよ、私この映画すっごく見たくてさ」
などと言ってみると、
「シロイさん……だってわたし、すごく相談したいのに……なんでそんな意地悪言うんですか……わたし、どうすれば……」
と泣きそうな顔をされましたので、もう今日はこれ以上楽しい時間を過ごせそうにない、と私は諦め、カイちゃんを連れて帰ることにしました。
(距離を置くつもりだったのに私……なにもかもうまくいかん……映画はあとで一人で借りよう……)
しょんぼりしながら帰宅すると、カイちゃんはさっきまでの不機嫌が嘘のようににこやかになり、
「わたし、ガルト先輩ととうとうお付き合いできることになったんですー」
と言いました。
「オメデトウ。ヨカッタデスネ」
「ありがとうございますー。それで、シロイさんにお願いがあるんです」
「オネガイ?」
「あの、わたしがガルトさんと付き合いはじめたってこと、内緒にしてもらえますか?」
「……ああ、はい。それは構わないけど」
「絶対に秘密にしてくださいね。わたし、シロイさんを信じてますから。しゃべらないでくださいね。もしもばれたら……わかりますよね?」
やけに何度も念を押され、私はひたすらこくこくと頷いてみせたのでした。
秘密が守られていることを確認し、安心を得るためでしょうか。
カイちゃんはますます、私と行動を共にしたがるようになりました。
みなで遊びに行ったり、食事に行ったりした後は、なにかと私の家に来たがり、十回中九回は断れても一回くらいは私も押し切られてしまいますので、その都度
「たのしかったー、やっぱりヨルダさんやさしーですね! でもわたしもうガルトさんがいるからなー。ヨルダさんにはほんと悪いことしてるっていうか、夢見ちゃってますよね絶対。まあ、あの顔で夢とか見ちゃうことが、ちょっと身の程知れってかんじではありますけどー」
とかその手のブチマケトークを披露されることになり、なんか聞いてる私が泣きそう。
「カイちゃんがゲーセン行きたいって。シロイも行くだろ?」
いつものようにヨルダくんに誘われた私は、とうとうある日、我慢ができなくなってしまいました。
「あれ? 今日って他の一年生も誘って、みんなでカラオケじゃなかったっけ?」
「こないだカラオケ行ったから、今度は別のがいいんじゃないかって、カイちゃんに言われてさ。それもそうかな、と思って」
「他の子たちはそれでいいって?」
「いやー、それがゲーセンに変更になったら、参加者減っちゃってさ」
「ふーん、なら私、今回はパス。ていうか、ちょっとそれ、だめじゃない?」
「へっ? なにが?」
「参加者減っちゃうのにカイちゃん一人の希望が通るって、なんかおかしくない? 他の子たちはカラオケ行きたかったってことでしょ? それやってると、勘違いしちゃうよカイちゃん」
「勘違いってナニ。いい子じゃんカイちゃん」
「いい子かなあ……悪い子ではないかもしれないけど、いい子でもないと思うんだけど」
(いっそカイちゃんのブチマケトークの中身を今ここで言えたら楽なんだけどなー)
しかしながら私はカイちゃんから厳重に口止めされている身であり、約束は守るべきだという思いもあり、そもそも破ったらどうなるのか考えるのも嫌なので、なんとも歯切れ悪く言葉を濁すことしかできません。
「……なんかさ。シロイまでそういうのやめてくれよな」
急にヨルダくんの声が冷たくなりました。
「カイちゃんが何したって言うんだよ? シロイは理不尽な悪口とか言わないやつだと思ってたのに、がっかりだよマジで」
これを言われた時は、びっくりもしました。失望された、と思うと、なんとも言えない悲しみが胸の奥から湧き上がったのですが、次の瞬間。
(なんだこれ。いくらなんでもおかしくねーか)
悲しみ以外の何かが、胸の中でめらめら燃え上がりました。
(理不尽な悪口ってなんだよ! 確かに婉曲的な部分もあったが、全体的に見れば私の発言は理不尽ではないと思うぞ!)
(考えてみろ! カレーパーティのとき、ヨルダくんいたよね、ちょっと困ってたのは私だけじゃなかったよね! それなのにそれなのに理不尽て)
(ああああ大体さあ! 「シロイはそんなやつじゃないと思ってた」とか言うならね? もうちょっと私を信じるべきじゃないかしらあ。そんなやつじゃないはずの私が、なんでこういうことを言い出したか、考えろよなあああああああ!)
言いたいことが一気に頭の中で渦巻き、私はぎゅっと唇を噛んで自分を抑えつけました。
黙り込んだ私の様子を見て、ヨルダくんは更にこんなことを言い出しました。
「やー、まあさ。おれだってこんなこと言いたくないよ。女って自分より若い子には嫉妬するものらしいもんな。カイちゃんはいい子だし人気あるし、無理ないかもしんないけど」
(何言ってんだコイツ……)
あまりのことに茫然としてしまったせいで、逆に冷静になってくる私。
(そういえば、女の嫉妬とか、女同士の争いとか、そういうのが好きな男のひとっているよなー)
(女は争う、女は妬む、女は足を引っ張り合うとか、そういう思い込みを愛してるんだよねー彼らは。そんで、美人とか可愛い子はきっと他の女に嫌がらせされてるに違いないって、思ったりしてさ)
(それって、ヒーロー願望の現れの一種なのかも。モテモテのカイちゃんを守るナイトくんになりたいのかな。そのためには悪役が欲しいから、嫉妬に狂った女役にはシロイをキャスティングしておこうみたいな?)
「ハハハ」
私の唇から乾いた笑みが漏れました。
「なんかもう、どうでもいいやあ。私がバカだった。ごめんごめん」
急に気持ちがすっきりしました。
(ヨルダくんがカイちゃんに何言われたって、別にいいやあ。騙されることになっても、気にならないやあ)
(てゆーか、気にしてた自分がバカみたいー)
(活躍しろよナイトくん、いろいろなものを敵に回して、どこまでもがんばれ!)
これがきっかけとなり、ヨルダくんをはじめとするナイトたち数名のご活躍によって、カイちゃんと私は急速に疎遠となりました。
正直、かなりイラッとくる場面もいくつかありましたけど、そんなのは些細なことです。
大事なのは、そのおかげで私の心や生活に平穏が取り戻せたということです。結果的には悪くない流れだったと、言えるでしょう。