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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

リアリティで接客

一年ほど前に、ベコヤマ・サリコさん(仮名)とその娘トモリちゃん(仮名。当時五歳)と一緒に、東京ディズニーランドに行きました。
天候にも恵まれ、クリスマスのデコレーションも美しく、たいへん楽しく過ごすことができました。


私たちが最初に乗ったアトラクションは「ジャングルクルーズ」でした。
これは32人乗りのボートに乗り込んでジャングル探検に出掛ける、というコンセプトのアトラクションです。
コンセプトに従って、カバやワニ、象やゴリラといった動物がたくさん出現しますが、これらは皆精巧な作り物で、動きも外見もリアリティに溢れ、よく出来ています。


楽しいジャングル探検も終わりに近づき、船着き場に近づくと、キャストのおにいさんが、いつもの決められた台詞を口にしました。
「それではみなさん、ジャングルの旅も終わりに近づきました。船をお降りになりますときは、足下にお気をつけください。また、忘れ物がないようにご注意ください。最近増えている忘れ物は……」


私は何度かジャングルクルーズに乗ったことがありますから、この台詞の続きを知っています。
「最近お子さまをお忘れになるお客様が増えています。気をつけてくださいね。忘れられたお子さまはここで育って、ジャングルクルーズで働くようになるんですからね。思い起こせば十年前、ぼくもここに忘れられた子どもでした」
というのがそうです(たぶん細部は違うけど、大体こんなかんじ)。


ところが次の瞬間、私の予想は裏切られました。


「最近増えている忘れ物は彼氏です
!?
「気をつけてくださいね、置き去りにされた悲しい彼氏は……もうジャングルクルーズで働くしかなくなるんですよ! 今だから明かしますが、実は三年前、ぼくもここに忘れられた彼氏でした。置いていかれた彼氏でした。いったいあの子は、いつぼくを取りに戻ってくるんでしょうね? ……ははは。ははははは。はははははははは!
そう言ってキャストのおにいさんは高らかに笑いながら、一瞬遠くを見るのでした。
精巧な作り物の動物たちが漂わせるものとはひと味違ったすさまじいリアリティがその台詞には溢れており、私たち観客に
「さすがディズニーランド」
という思いを深く味わわせてくれましたよ?