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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

夢追人は今もなお

突然ですがみなさん、夢見るときはカラー派ですか白黒派ですか、どちらですか?
私は生粋のカラー派です。
IQレスラー桜庭は白黒らしいですねえ。
中には「モノクロというよりはセピア」とか「カラーだけど、色調が現実より一段落ちて渋くなる」とか、そういうシックな方もいるらしいですね。
あと、「白黒だけど、一部にだけ鮮やかに色がついているときがある」というのも聞いたことがあります。
シンドラーのリスト』は全編白黒なのに少女のワンピースだけが鮮やかな赤、というシーンがありますけど、あんなかんじなんですかね。


夢というのは脳が五感の様々な刺激を再現してくれているものなわけですが(大雑把な表現だなあ)、人間が一番頼りにしているはずの視覚ですら、脳が手を抜いて白黒になっちゃうひとがいるわけです。
ということは、多分他の感覚は脳がもっと手を抜いているはず。
たとえば音のない夢を見る、というひとはあんまりいないと思います。いたとしても毎回必ず音がない、ということはあんまりないと思うんですよね。もちろんこれは聴覚に障害のない人間の場合ですが。
しかし、主要な音(登場人物の台詞など)以外の細かな音はたぶんあんまりちゃんと再現してなさそうな気がします。街中の雑踏とか、夜の虫の声とか、アパートのどこかの部屋から聞こえてくるテレビの音とか、そういう重要度が低くて、普段もあまり注意を払っていない音まで夢の中できちんと再現するひとって、きっと稀ですよね。(街中の雑踏などがその後夢の中で重要な音に変貌する場合は除きます)
これが、「夢で頬をつねっても痛くない」とか「夢の中で食事をしても味がしない」とか、そういう話のもとになっていることだと思うんですよ。
重要度の低い痛覚や味覚の再現に対して、脳が手を抜いている。


ところで私の夢のカラー度合いと言ったらもう、本当に総天然色というかなんというかで、「現実と寸分違わぬ出来である」と一部で(というか私ひとりに)好評をいただいております。
つまり、私の脳は、視覚の再現に全く手を抜いていないのです。それどころか張り切っている気配を感じる時すらあります。夢の中でこの世ならぬ美しいものを見たときなどがそうですね。色合い、光、かたち、全てが現実で見たことのないほどの美しさを持ったものがに夢に出てくるときというのは、本当に嬉しいものです。
聴覚は、まあまあかな。張り切ってはいないけど、この程度ならいいだろう、というかんじ。雑踏の音は再現できないけど、主要な音声はちゃんと聞こえるし、綺麗な音、素晴らしい音楽が聞こえるときもある。及第点。
触覚。手触りなどはかなりきちんと再現できています。ビロードやシルクを触ったときの快感、漆喰の壁のざらっとした感触など、ちゃんと感じます。ただし、手抜きを感じるときもある。
味覚と痛覚に関しては、はっきりと手抜きを感じます。痛みも味も感じるけど、感覚として薄い。一枚へだたったかんじ。ただ、痛覚はあんまりリアルに感じたくないので、こんなものでいいか、と思っています。
全体的に、私の脳は、けっこう夢に関しては頑張っています。


さて、私の脳はなぜけっこう頑張ってしまっているのか。
これは私が夢を見るのが好きだからだと思います。
印象に残った夢は何度も反芻して、ストーリーを書き留めるくらい好き。
ストーリーを書きとめた夢に勝手にタイトルつけちゃうくらい好き。
「それにしてもあの学園ホラー三部作はよかったなあ」
と評論を始めちゃうくらい好き。評論対象は自分なのに。
視聴者(自分)が喜んでくれるから、クリエイター(自分)もその喜びをわがことのように感じ(わがことなんだけど)、いっそう熱を入れて作品(夢)を作る。
けっこういい関係が築けてますよね。作り手も受け手も自分という点に目をつぶれば。


いやはや、しかしナゼこんなに長々と夢話を続けてきたかというと。
脳という名の夢クリエイターがですね! 最近作品に対していっそう情熱を注ぎ込み始めたんですよ! 更に凝りはじめちゃった!
なんと私の脳は最近、今まで決して再現しようとしていなかった「嗅覚」という分野に手を伸ばし始めたんですよ。
つまり、私の夢、においがするようになったんです。リアルに。濃厚に。
起きてから周囲の空気を嗅いでも同じにおいがするわけじゃないんで、やはりあれは現実の影響あっての夢ではなく、夢独自のにおいなんだと思うんですけど。
まったく、脳のやつ、本当に挑戦を諦めない、クリエイターの鑑みたいなやつだぜ、と感心することしきり。
ただね……ただひとつ、脳に注文がありまして。


いくら私がホラー好きだからって、今までもホラー風味の夢を高く評価してきたからって。
ホラー風味悪夢のときは、嗅覚再現しなくていいですから!
闇の中にねっとりと漂う血のにおいとか、そのにおいを辿っていった先に転がる惨殺死体とか、あんまりリアルだと心臓がばっくんばっくんいっちゃうから!
起きてからしばらく、
「血のにおいまでしたなんて、あれが夢だったとはとても思えない」
とか考え込んじゃうから!
どうせ嗅覚の再現するならお花畑とか、アロマテラピーとか、優雅なティータイムとか、そっち方面でお願いしますよ。