放火、動物虐待、夜尿症。
これはですね、連続殺人犯の少年時代の三大特徴なんだそうです。
長じて後連続殺人犯になるような方というのは、「栴檀は双葉より芳し」っていうんですか? それなりにどぎつい個性を幼少期から持ち合わせているんだね、という話です。
連続殺人犯の方々に少年時代を懐かしく振り返っていただくと、放火と動物虐待と夜尿症が思い出の一こまとして、かなりの高確率で登場するそうですよ。
殺人に至る前段階として放火や動物虐待に手を出すシリアルキラーズ。ホップステップジャンプの構図が、ここにもありましたね。
ところで。
夜尿症、つまりおねしょ。ねしょんべんとも言いますなあ。
おねしょなんて、幼い子どもなら全然珍しくないわけですが、どうしてそんなものが連続殺人犯の特徴としてわざわざ取り上げられるかというと、彼らのねしょんべんものがたりは、一般人より長く続くからですよ。
四歳の子どもがおねしょをするのは珍しくもなんともないですが、十歳以上の子どもがおねしょをするのはレアケース。そして連続殺人犯はそのレアケースにあてはまるわけです。
どうしてこういうことが起こるのかは、よくわかっていません。
ただ、連続殺人犯の大半は、CTなどで調べると、脳に異常があることがわかっています。
彼らはしばしば、幼少期に重篤な脳障害を起こしかねない怪我をしているのです。怪我の原因は事故などの場合もありますが、連続殺人犯の多くは凄惨な児童虐待を受けて育っており、虐待が彼らの脳に深刻なダメージを与えてしまうケースが多い。
脳障害のために自己を制御する力が損なわれているのが連続殺人犯であり、そのため彼らは尿意のコントロールがうまくいかずにおねしょをしたり、長じて後は暴力衝動を抑えることが出来ずに殺人行為に走ったりするのかもしれない、と言われています。*1
放火、動物虐待、夜尿症の三大特徴に、脳障害と児童虐待を付け加えると、連続殺人犯の五大特徴となり、
「自分の子どもを連続殺人犯にしたければ、子どもの脳が駄目になりそうな凄まじい暴力を日常的にふるって、児童虐待しまくればいい」
と言われているんですよー。チェキラッ!
それはさておき。
十歳くらいになってもおねしょをする……と聞いたときにね、うっかり私、あるひとのことを思い出しちゃったんですよ。
心苦しいんですけれども、あの方です。
幕末の有名人。スーパースター。人気者。
坂本龍馬。
これがね、失礼な考えであることは判っているんです。大体龍馬の少年時代には放火や動物虐待などの他の特徴がないじゃないか、とも思うんです。
だけどね。
「坂本龍馬は実は連続殺人犯だったあっ」
みたいなサイコサスペンスものがあったら、もしかしてちょっと面白くない? とか思ってしまったらもう、止められない止まらない。
あらすじ:
幕末。佐幕派と攘夷派の争いに揺れる京都。その争いの影で、幼い子どもや若い女性が残虐に切り刻まれる、凄惨な殺人事件が連続して起こっていた。
新撰組隊長、近藤勇は、京都の治安の責任者である、所司代・松平容保からこの事件を解決するよう、密命を受けていた。
しかし、攘夷派の動きが活発な状況下、そのような捜査に避ける人員は無い。苦悩する勇の前に、自ら捜査責任者をかってでたのは沖田総司。
実は被害者のひとりは、沖田がよく一緒に遊んでやっていた少年だったのだ。
怒りに燃える沖田は一人、京都の街を死に物狂いで探索する。
やがて沖田は、やはり京都の治安を守る立場にある京都見廻組の今井信郎も、この事件を追っていることを知る。
二人は所属する組織を超え、協力しあい、ついに一人の男の名が捜査線上に浮かび上がった。
男の名は坂本龍馬。
後に薩長同盟の立役者となる男。
あっという間に、3秒くらいでこんなストーリーが思い浮かんだよママン。
そしてね、そしてね。
沖田のもとに殺された少年の姉が訪れて、淡いラブストーリーが発生したり!
だけど今度はその姉までもが連続殺人犯の毒牙にかかったり!
復讐に立ち上がった沖田が病魔に倒れてしまったり!
死の床についた沖田に今井信郎が、事件の全てを託されたり!
寺田屋に潜む龍馬を決死の覚悟で襲撃した京都見廻組の面々が返り討ちにあったり!
仲間を龍馬に射殺された今井信郎が血涙を流したり!
しながらストーリーは身を揉むように進んでいくんですよ。
龍馬の人物像についてですが、彼は晩年、梅毒に感染していたという話があります。
梅毒の第三期にもなると、ひとは重篤な精神症状を呈し、妄想などにとりつかれたりしますし、とにかく人格がヤバイ方向に変質することが多いと、もっぱらの噂です。
最初はまぎれもない好人物であり、英雄であった龍馬が病魔に侵されて、徐々に精神のバランスを失っていくことにすれば、みんなの人気者である坂本龍馬のイメージが、それほど崩れないかもしれませんね?
「新しい日本の夜明けのためには、おまんらの血が必要じゃきに」
とか言いながら千葉道場仕込みの華麗なる北辰一刀流を見せ、ばっさばっさとキルビル斬りの坂本龍馬。妄想のせいだから、しょうがないんです。
「日本刀はもう古か。これからは銃ぜよ」
とか言いながら、今度は犠牲者たちを銃で襲う坂本龍馬。
突然、殺人鬼の犯行の手口が変わったことに疑問を覚える沖田と今井。
それでまあ最終章。
物語の締めくくりは当然、かの有名な、坂本龍馬の暗殺シーンで決まりでしょ。
暗殺者の群れの中には、京都見廻組の今井信郎がいるわけですよ。
一人の英雄を屠ろうとする自分の正義に疑問を持ちつつも、殺人犯を野放しには出来ない、と悲壮な決意を固めた今井信郎がね。
そして最後には、こんなエピローグを付け加えましょうか。
1888年、龍馬の死から21年後の霧の都ロンドンに、恐怖の悲鳴が響きます。
そう、世界初の連続殺人犯と呼ばれるあの男、切り裂きジャックの登場です。
犯人は未だ不明とされるあの一連の事件ですが。
しかし、世の人々は知らない。
切り裂きジャックが現れる以前、極東の都に、驚くほど残忍な連続殺人犯がいたことを。
その殺人犯を追い詰める途上で、勇敢なる男達の命が失われたことを。
……そして、今井信郎が龍馬の暗殺に向かったあの日、殺されたのは実は龍馬本人ではなく、身代わりの人間であったかもしれないと言われていることを。
ここで最後に、「切り裂きジャックは日本人説」*2を引用して、物語を終わらせましょう。
……ええっと。
坂本龍馬様。
ごめんなさい。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
やっぱり許されませんかね、こんな物語は。
でもなんか私、今そんな小説が、めっさ読みたい気分なんですけど!
*******注意!******
一応念のためにいっておきますけど、私は「坂本龍馬=シリアルキラー」だなんて、ちっとも思ってませんからね。
大体において、おねしょくらいみんなしますから、たぶん。十歳になったって、するやつはしますから。
それだけで誰かをシリアルキラーだと考えるのには、絶対無理がありますから。
以上。言い訳完了。