wHite_caKe

だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

ヒーローはここに


ヒーローがいない、と君はこぼす。
辛いのに、苦しんでいるのに、誰も助けにきてくれない。
仕方のないことではあるけれど、それでもヒーローがいてくれればどんなにいいかと思うよ、と。
誰も自分を救ってくれないというのは、なんて孤独なんだろうね、と。


ああだけど君、それは違う。
ヒーローはいるんだ。本当にいるんだよ。私はそのことを知っている。
この世界には君を救うために知恵を絞り、死力を尽くす、君専属のヒーローがいるのさ。


ただまあ……そのヒーローは君にとっては確かに少し、頼りなく思えるかもしれないけどね。
空も飛べないし、怪力の持ち主ってわけでもないし、超能力も持っていない、
ごく当たり前の、生身の人間なんだよね、君のヒーローは。
それじゃ物足りないって?
まあ、その気持ちもわかるけど。
けれど生身のヒーローというのはある意味、誰よりも勇敢だと、言えるんだよ。
空も飛べない、力も強くない、もちろん超能力だって使えない。
そんな人間が、それでも君のために力を尽くして、君を守ろうとしてくれているんだ。
傷つくことも殺されることもあるのにね。ハッピーエンドが用意されているわけじゃないこの世界で、ヒーローはそれでも、君のために戦う。


全ての生身の人間がそうであるように、君のヒーローも、弱さと醜さと愚かさを持っている。仕方のないことだから、責めないように。人間というのはそもそも、そういう不完全な生き物なんだからさ。
君のヒーローは挫けることもあるし、負けることもあるし、戦う意志をなくすときもある。
私はそれを知っているよ。見てきたから。
だけど同時にそのヒーローは、何度も私に、強さと勇気と気高さを見せてくれた。
敗北に屈せず、挫けても立ち直り、最後の最後には、戦う意志を取り戻す。
何度倒れても立ち上がるなんて、倒れないヒーローよりもすごいだろう?
だから君が、あのヒーローを信じてくれると嬉しい。


私はもちろん、君のヒーローを信じているよ。敬意も抱いている。それに値するひとだからね。
たとえばあのヒーローが、私に助力を求めるようなことがあれば、喜んで馳せ参じるつもりでいる。私のような人間が、ヒーローのお役に立てるなんて、それはこの上ない名誉だよ。とても嬉しいことだ。考えただけで昂揚する。
同じように思っている人間は、たぶん他にも、いるんじゃないかな。実を言うと、心当たりもある。
それくらい素晴らしいひとなんだよ、君のヒーローは。


ああ、不思議そうな顔をしているね。
そんなヒーローがどこにいるのかわからない、そんなヤツは知らないって、そう思っているんだろう?
教えてあげるよ、ヒーローは今、ここにいる。
私の目の前で、こちらを見ている。


常に君と共にあり、君を救い、守り、戦い続ける、君だけのヒーロー。
つまり君だよ。君自身だよ。
まだ気付いていなかったのか?


ヒーローがいない、と君は嘆く。
それは違うよ、ヒーローはいる。私はそのことを知っている。
そして君が早くそのことを思い出してくれるように願う。


君のヒーローは本当に、とても素晴らしいひとなんだからさ。