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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

集団墓参り

さて、今回私がホラーを求める気持ちになったのは、実は下記のような事柄があったからなのでした。

その四 セキゼキさんの話

その日、私は近所に住むセキゼキさんとの待ち合わせ場所に向かっていました。
すると、前方から「ひえっ、ごめんなさい」という声がきこえ、ふとそちらを見ると、なんとセキゼキさん(仮名)が慌てた様子でこちらにやってくるところでした。
あらちょうどいいタイミングだけど、なんだか様子が変だなあと思いながら、私は挨拶をしました。
「こんちわー。どしたん泡食った様子で」


「いや、この坂を下った先に霊園があるんだけど、おれ、待ち合わせに遅れそうだから近道しようと思ってね、霊園を突っ切ったのよ。
そしたら! なんかふと気がついたら五十人くらいの人が、周りに立っててさ。おれをすごい目つきで睨んでいたわけ。
なんかよくわかんないけど、集団墓参りとかそういう宗教的セレモニーの最中だったのかな? とにかく、どうも邪魔して怒らせちゃったみたいだから、慌てて飛び出してきたわけ。
いや〜、びっくりした。坂道ダッシュで走ったから、苦しい」


私がセキゼキさんの後ろに目をやると、確かに道は霊園へと続いています。
しかしながら一点、納得しかねる問題があり、私の見る限り、集団墓参りをしている五十人どころか、人間は誰一人そこにいないのでした。
「セキゼキさん……あの霊園、誰もいないよね?」
慌てて振り返ったセキゼキさんの口がかぱっと大きく開きました。
「え……あれ? えええっ、なんでなんで、どういうことだコレェ。あ、いや、なんだ、別に不思議じゃないよな、みんな一斉に撤収しただけだよな! うん!」
「五十人の人間が一斉にすばやく撤収て、それずいぶん鍛えられた脚力だね? ……そういえばお盆も近いしなあ」
「ちょっ、やめろよすぐお盆とか言い出すの。オカルトは心弱い人間の現実逃避だって何度言ったらシロイはわかるのかな!?」
「そうだよねー、なるほどねー、足の速い五十人が集まって集団墓参りをしたあと、一斉にすばやく撤収して、姿を消す。そんなのよくあることだもんねー。何一つ不思議じゃないよねー。これをオカルトと解釈するやつのほうが頭おかしいってもんだよねー」
「なっ、なにその言い方。よくないよシロイ、そういうのは。いやほんと君のそのオカルト愛好癖は困ったもんだね。あのひとだって、ただ単にすごく座高が高いだけのひとなんだよ!」
「…………座高?」
私が聞き返すと、セキゼキさんは「あっ」と呟きました。
「え、ちょっと待って、座高って何の話? あのひとって誰?」
「うるさいうるさい、もうこの話は終わりっ!」
「えっ、えっ、ちょっと待って、急いでどこ行くんだよ、まってー」


というわけで、セキゼキさんがいきなり足早に歩き出してしまったために、その場では座高の高いひとについて何もヒアリングできず、その後もこの話題になるたびにセキゼキさんが強引に話を打ち切るため、いまだに私は集団墓参りと座高の高い人についての詳細がつかめていないのでした。



てなわけで

2009年夏ホラー発掘の会はこれにて終了させていただきます〜。
ホラー話、その一はコチラ、その二はコチラ、その三はコチラにございます。