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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

クリスマス目前! はじめてのマジックグッズはコレだ! 減量ver

 クリスマスが目前に迫ってまいりました。
「子供が『手品を始めたい』って言い出したからプレゼントしたいんだけど何を買っていいか分からないんだよ」
 という方のために。直前過ぎてもしかしたら手遅れかもしれないと思いながらも、私の独断と偏見に基づいたおすすめを紹介いたします。
 子供に初めての手品道具を聖夜にプレゼント。すっごくいいですよねそういうの!

オススメしない部門

 さて、まずは
「はじめてのマジックグッズとして多くの人に買われてはいくが、それに手を出したらアカン」
 と個人的に思っているものを紹介するところから始めます。
「おいおいオススメだけ粛々と紹介すれば済む話だろう」
 とお思いのあなた。それは確かに正論ですが、あなたが何も知らずに売り場に行った場合、これらのアイテムを買って帰ってきてしまう確率が異常に高いんですよ! だからあらかじめ言っておくんです。あくまであなたのために言っている。信じろ。

スポンジボール

スポンジボール
 これはとても良い商品です。実演で見せてもらえることが多いのですが、見るととても欲しくなります。だからみんな買います。そういう魅力に溢れています。
 ですが、おすすめしません。
 理由は簡単、スポンジボールは難しいのです。
 人前で見せてそれなりにウケを取れるようになるのにたぶん半年くらいかかります。
 せっかく買ってもらったプレゼントを披露することもできず、黙々と半年間練習に励むことができる子供って、たぶんかなり稀です。
 あなたのお子さんがそういう希少種でないのであれば、避けるのが無難でしょう。

ダンシングケーン

ダンシングケーン
 ダンシングケーンはとても良い商品です。
 幻想的で夢のある現象。これも実演見ると欲しくなりますね。
 ですがオススメしません。
 必要な練習量が半端じゃ無いんですよこの商品は。
 ダンシングケーンを買います。
 帰宅して開封し、説明書を見ます。
 ふむふむこうやるのね、と思いながらやってみる。
 ここで99%ほどの人が挫折します。誇張ではありません。頭に拳銃を突きつけられて
「挫折は許さねえ……!」
 とか謎の悪漢に脅迫されたら、もしかしたら泣きながら続けるかな?
 ですがそんな悪漢が現れてくれる可能性はとても低いので、
「ねえこの説明簡素すぎない? どうなってんの?」
 と思いながらみんな折れていきます。ダンシングケーンというのは、そういうものなのです。
 例えば自転車を買って説明書を読んで、それで乗れるようになる人がいますかって話なんですよ。
 自転車と同じように
「これいつの日かできるようになるのかよ?」
 という疑問を抱きながら練習を重ね、ある日できるようになるしかないのです。
 しかもダンシングケーンの場合は自転車と違って指導者がいない。たった一人で挑むしかない。
 獅子すら我が子をここまで深い谷に突き落としませんよ。ましてやあなた、ホモサピでしょう?
「…っ! それでもいいおれは……獅子を越えるっ!!」
 という方。東京ディズニーランドのマジックショップで売っているミッキーマウスのダンシングケーンをおすすめします。限定販売だから東京ディズニーランドの中でしか売ってないやつ。
 あれはよくできていて、とても扱いやすい商品です。しかもお手頃価格。これなら挫折率が98.5%くらいに下がるかもしれません。


 上記二つのマジックは、お子さんのお近くにマジックの指導者がいるのであれば、逆にオススメです。
 実演販売を見てつい買っちゃったのであれば、その実演をしてくださったディーラーさんに教えてもらうのが良いでしょう。
 実際、実演販売を見てマジックを始めてその流れでディーラーさんに師事し、長じてプロマジシャンになった方というのはけっこういらっしゃいます。

コレ買っておけば無難じゃないですかね部門

マジックブック

マジックブック
「とにかく簡単にマジックしてえ。安くてお手軽なのに盛り上がるやつ!」
 というワガママな要望をばっちり叶えてくれる商品です。
 簡単だから子供でもすぐに実演できて大満足。それなのに起きる現象は鮮やかでわかりやすくて観客も大喜び! というスグレモノです。

マジックセット

マジックワールド
 主に子供用で、複数のマジックを詰め合わせたセットです。ごめんなさいこれについては全然詳しくありません。
 いろんな商品がありますが、迷ったらtenyoの商品を買えば良いと思います。
 マジックを愛していてよく知っているメーカーが、初心者でも使いやすくお求めやすい商品を開発している。それがtenyoです。マジックをよく知らないメーカーがとりあえず出している商品とは「ちゃんとしている」度が全然違います。
 今後お子さんがプロユースにも耐える高品質商品を求め始めたら物足りなくなるかもしれませんが、それまではtenyoに見守られ育まれていこうではありませんか。

 子供へのプレゼントしてマジックセットはまさに王道ですよね。
 子供でもすぐにできる手品が詰まっていて、ちょっと練習すれば家族や友達の前でショーを見せられるようになります。
 ここから手品の喜びを知っていく人も多いのではないでしょうか。

しかしながら真のオススメはこっちです。

 だけどね。
 マジックブックとかマジックセットとかは、私のオススメではないのですよ。
 マジックセットを買いました。すぐできて楽しいです。友達にも見せました。満足したので押入れにしまい、二度と出しませんでした。
 結局これが一番よくあるシナリオなんですよ
 マジックセットはたいていの場合、子供を一年楽しませることができないんです。せいぜい数日。数週間もったら御の字です。
 それで満足できますか?
 年に一度のクリスマスプレゼントですよ。できればそれは子供の成長とか今後の人生の喜びとか生涯続く趣味とかに繋がってくれたら、嬉しいじゃありませんか。
 マジックというのはなかなか良い趣味なんですよ。自分がやっていたからそう思うわけですけど。
 趣味ってのはなんでもそうですけど、練習と学びを繰り返して達成感を得るという、素晴らしい喜びがあるじゃないですか。
 そしてこの喜びは、人生のあらゆる局面で人を支えるじゃありませんか。
 達成感の乏しい人生を送るってなんか辛いですからね。
 マジックの何が素晴らしいかと言うと、いろんなレベルの達成感を得られるところなんですよ!
 道具さえ揃えれば実演できる、手軽に得られる喜びもあります。
 練習がむちゃくちゃ必要だけどできるようになると凄まじい達成感が得られるものもあって、そういう達成感を得るためのルートがたくさんあるところがいいんですよ。
 この練習と学びと達成感の繰り返しをね、子供にぜひプレゼントしてあげたいんですよ私は!!

バイシクルの赤と青

バイスクル トランプ ライダーバック 青赤
 というわけで私がお勧めするのはまずトランプ。
 そんでトランプなら何でもいいわけじゃないんです、USプレイング社のバイシクルを買ってください。
「なんでその外国の会社のトランプ買わなきゃいけないの?」
 日本国産で流通しているトランプはたいていプラスチック製です。そんでプラスチックトランプは絶縁体で滑りませんので、カードマジックの重要なテクニックができなくなってしまうことがあるんですよ。
 だから紙製のカードが必要なんですけど国産トランプは二枚貼り合わせ方式のものが中心で、紙の腰が弱いのです。
 バイシクルは三枚貼り合わせ方式で腰が強く、滑りもよく、扱いやすいカードですから、とにかく最初はそれを買いなさい。
 そうやって、カードマジックを始めなさい。

 なぜカードマジックなのか? 答えは簡単、カードマジックというのはものすごく豊かだからです。
 たとえば中から花が出てくる帽子があったとしますよね。
 その帽子は他の事は出来ないんですよ。帽子がハンカチに変わったりはしないし、帽子の色が黒から赤になったりもしないんです。花を出す。ただそれだけ。
 だけどカードはそうじゃないのです。
 カード当てもできる、カードの色を変えることもできる、出現するカード、消えるカード、移動するカード、集まるエース。
 カードマジックを始めてみれば一組のカードが生み出す世界の広がりに、目を見張ることになります。

 だからバイシクルをまず買うのです。
 赤と青を両方買う理由は、二組あることで更に広がる世界があるからなんですけど、そこから先は自分で学んでいこうな!

「ラリー・ジェニングスのカードマジック入門」

新版 ラリー・ジェニングスのカードマジック入門
 さてカードを手に入れたなら、それをどう使うのかということを学ばなくてはなりません。
 入門書が必要です。最初の一冊は重要です。
 手品の入門書は数多くありますが、私が選ぶのはラリー・ジェニングスです。
 なぜならこの本は

  1. 解説イラストが良質
  2. 初心者が身につけるべき技法の解説がわかりやすく順を追って掲載されており、レベルアップに最適
  3. 掲載されているマジックが名作ぞろい

 という入門書としてこのうえなく親切な作りをしているからです。

 まず一番目の美点。手品の解説書というのは、文だけでは駄目なのです。どうしても
「左手はこの角度でカードをこう持って、その上から右手をこうかぶせてそのとき右小指をぎゅっと寄せて」
 みたいな情報を説明するための視覚情報が必要になります。
 そしてそのためには写真よりも圧倒的にイラストの方がわかりやすいのです。
 優れたマジック本は解説イラストが良質でなければなりません。

 わかりやすさで言ったら今の時代動画なんじゃないのという意見もあるかと思います。
 だけど動画じゃなくて本とイラストのほうがすぐれている部分があるってことを説明する文章を昨夜書いたんですけど気持ち悪いくらい長文になったから削りました!
 というか他にもいろいろ削ってますから、減量前の長文が読みたい奇特な方がいらしたらぜひTwitterでご連絡を。気持ちの悪い長文がDMでかえってくることでしょう。
twitter.com



 そして二番目の美点。ここが「ラリー・ジェニングスのカードマジック入門」で一番優れているところだなって思うんですけど技法の解説が良いんです。
 カードマジックをやる上ではやっぱりテクニック、これを技法って呼ぶんですけど、それをたくさん習得していく必要があるわけです。
 カードの切り方、並べ方、配り方、数え方、広げ方、持ち方。
 そういった数々の技法を習得しないとカードマジックはできません。
 この本では、基本的で有用で重要な技法がわかりやすくしっかりと解説されています。
 この本に載っている技法を一章から順々にステップアップしていけば読み終わる頃には、クロースアップマジックの中級者一歩手前くらいにはなっているんじゃないでしょうか。


 そして三番目の美点。掲載されているマジックの選択が優れています。
 この本に載っているマジックのネタ数は決して多くはありません。ですが、どれも粒ぞろいの名作です。演じることができれば観客のウケが良いものばかり。
 掲載されているマジックのネタ数で言えばもっとたくさん載っている本もあるんですけれども、技法に紐づいて厳選された名作が載ってるという点ではラリージェニングスの入門辞典は本当に優れています。
 巻末のカードマジック傑作選の「まぼろしの訪問者」とか「タイクーンエーセス」とか大好きなネタです。

というわけで

 赤と青のバイシクルと「ラリー・ジェニングスのカードマジック入門」は、あなたのお子さんがマジックという世界に興味を持ち、その道を歩き始める時のこの上ないお供となります。
 すぐに見せられるマジックも身につくし、半年くらいみっちり練習すれば一端のクロースアップマジシャンと言えるようになるのではないかと。
 そんでね、半年間ラリー・ジェニングスの世話になった人間は、たぶん一生この本を手放しませんよ。そのくらい愛着が生まれます。
 あなたがプレゼントした本を我が子が一生大事にしてくれるって、むちゃくちゃ嬉しくありませんか。私なら嬉しいです。
 クリスマス目前過ぎて時間がないって? 大丈夫、ネットで買えますから! いける! ラリー・ジェニングスのほうはイブまでにお届けって書いてあったよ今見たら! バイシクルは……Amazonではクリスマス後って書いてあったけど大丈夫! あれはたいていおもちゃ屋で売ってる! 急げ! 走れ! ここが正念場だ!