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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

父さんが残した 熱い想い 母さんがくれた あのまなざし

私は昔、男女比がちょう偏った職場(最も偏っていた時期の男女比は60:1、その後60:2、20:1となった)で働いていたことがありました。ああそう、ちなみにバレンタインは地獄でしたよ、本題とは関係ないけど。


そんでね。
そういう状況って、殿方の心は非常にオープンになるものらしく、壁紙やスクリーンセーバーが「扇情的な女性の写真」(露出高め着衣、半裸、水着、下着、全裸などバリエーション様々)である率が異常に高かったのでした。もちろん、扇情的でもなんでもないノン十八禁壁紙ユーザーだって大勢いらっしゃいましたが、それにしても本当にたくさんのディスプレイの中で、大勢の女性たちが息づいていたものでした。


そういったPC環境の中、生後数ヶ月の息子さんの愛くるしい写真を壁紙にしていた男性がいらっしゃいまして、
「息子さんですか? かわいい盛りですね」
などという会話を交わしたりしたことがありました。ほんとうは扇情的な女性写真に関しても
「AV女優さんですか? かわいい盛りですね」
くらい言ってもぜんぜん構わないと思ってはいたんですが、しかしなんかそれを実行すると気まずいフンイキになりそう気がしたのですよ、不思議ですけど。


さて、そんなある日、私が用件があって、件の男性の机を訪れましたところ、彼のPCの壁紙は全裸の巨乳女性写真に変更されていました。
「息子が乳に負けた! 父が乳を選んだ!」
私はそのとき、他人事ながらちょっぴりやるせない気分になったわけですが、父が息子を制作する過程で乳が重要な役割を果たすことはよくあるわけだから仕方ないのだな、父は乳よりも息子を大事にすべきだなどと考えた自分は間違っていた、とその後考え直しました。


息子に代わって選ばれた乳の持ち主たる女性の乳首は、デスクトップ画面上のフォルダによって、ちょうどよく隠されていました。
水着写真じゃなくて全裸写真をわざわざ壁紙にしたのに、乳首がフォルダで隠れちゃってますけど寂しくはありませんか、と私は勝手に思っていたのですが。
ある日、席を離れて戻ってきた乳を選んだ父たる男性は、フォルダが何者かの手によって移動され、彼女の乳首が衆目に晒されているのを発見します。
「誰だこんなことをしやがったのは!」
彼は激しく憤りました。
「おれがちゃんと! ちゃんと隠していたのに、フォルダで乳首を隠していたのに!」
私はそのとき初めて、彼女の乳首は父の確固たる信念によって隠されていたことを知りました。
「この子の乳首を丸出しにして辱めたのは誰なんだよオオおおおお」
結局、乳首晒しの犯人は最後まで名乗り出ませんでした。
あ、ちなみに犯人は私ではありません。私の他にもあの職場には、フォルダと乳首の位置関係についてモノを思っていた人間が幾人もいたということです。


独占欲。
乳首独占禁止法
乳首の偏在を許しがたく思った乳首プロレタリアートによる革命としての乳首晒し。
乳首共産主義を指示する乳首赤軍によるテロ事件。
あのとき、憤る彼の横で、そういった様々な単語が私の脳内を駆け巡りましたが、このような場面でどれを口にするのが適切なのかはわからず、私はただじっと黙っていました。
私にわかったのは唯一つ、乳を選ぶ父である彼にとって、乳首がいかに重要なものであるか、それだけでした。


もしかするとこの乳は本当に特別な乳なのかもしれない、息子が生まれる過程に乳が関与する可能性を私はかつて考えた、その乳こそがまさにこの乳であるのかも、彼の息子はこの乳首から母乳を吸って育っており、まさにこのPCは家族の暖かな交流の場であったのだとすれば彼の怒りもきわめて自然、だとすると奥さん綺麗なひとだなずいぶん。あと、ちょっと大胆なひとだ。
などという仮説も立ててはみたのですが、その裏はいまだにとっておりません。いや、退職した職場だし、この先もとらないと思いますけど。