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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

熱い便座界

洋式便器の便座。
あれ、みなさんどうしています? 上げてます? 下げてます?
一般的には女性は掃除のとき以外は便座を上げることはないと思うんですけどね。
そんでまあ、私もY染色体とか持ってないし、便座を上げておく必要性はないんですけれど。


初めてひとり暮らしの男性の家でトイレを借りたとき。
私は上がったままの便座を見て、若干のカルチャーショックを覚えました。 実家では便座は常に下がっていたもので。
「そうか! 男性は便座を上げておくものなのね。そのほうが便利なんだ、彼らには。 ふーん、なるほどねー」
(まあ実際には上げておくというよりは、上げて使ったあとわざわざ下げないだけなんでしょうけど)


で、そう考えながら私は便座を下ろして用を足し。
レバーをひねって水を流し、そこではたと動きを止めました。
あれ……この便座、どうすべき?
家主である男性は、便座を上げっぱなしにしていました。
「郷に入っては郷に従え」とか「立つ鳥あとを濁さず」とか申します。現状復帰を目指して、私も便座を上げておくべきでは?
当然便座は上がっているものと思い込んでいる家主が、便座が下がっていることに気付かず、なんらかのトラブル(そんなものないと思うけど)を起こしてしまう危険があります。


だけどそれも変な話だよなあ。


そもそもこの後他の誰かがトイレに入ってきたら(そのときは複数人数で飲み会をやっていたのです)、
「なんでシロイが出た後の便座が上がっているんだ? フツー女って便座上げないよなあ。まさかあいつ……男?」
などと思うかもしれない。それは困る。絶対に困る。
(この発想がいささか突飛であることは認めますが、その頃テレビの推理ドラマで、便座を上げっぱなしにしてトイレを出たせいで女装していたことがばれるというシーンを見たのですよ)


結局激しく迷った末に私は「蓋まで閉める」という手段をとりました。
これなら便座が上がっていることに家主(をはじめとする男性陣)が気付かない、ということもないわけです。しかし、その後トイレを出た後私は
「でもなー。蓋を開け、便座を上げるって、手間だよなあ。かえって悪いコトしたのかなあ」
と悩み続けておりました。
この悩みはその後、数年持続したんですよ。馬鹿でしょ。


そしてその数年間
「えー、便座は下げておくのがマナーだよ。そうじゃないと気付かずに腰を下ろしたとき、危ないじゃん」
という女性の意見を聞いてなるほどと思い、その後男性から
「そんなことないだろ。それはいささか女性優先主義的考えじゃないだろうか。便座界に男女平等を確立せよ」
と反論され、そうかと思えば
「便座を常に下げておいたとしてもソレは女性優先主義とは言えない。男性も大のときは腰を下ろして用を足すではないか。下げた便座は女性の大小と男性の大を処理できるのに対し、上がった便座は男性の小に対応するのみ。便座は下がっている状態でこそ本領を発揮するのだ」
と言い出す人間が現れ、更に
「最近は男でも座って用を足す人が増えているらしいよ。おれもそうしてる。そのほうが周りが汚れないからな。だから下げたままでいいんじゃない」
などという衝撃の新情報が飛び出し、その新情報に対して
「座って用を足すなんて、そんなの男の沽券に関わるよ。立って用を足すその快感がわからんか」
と憤る方もいらっしゃって、便座界は混沌を極めているのでした。


私の悩みが解決されたのは、なんと今年になってからです。ほんと馬鹿でしょ。
大学一年のときから今まで、トイレに入るたびに「便座をどうすべきか」考え続けていたんですよ。マジでどうしようもない人間だ。


さて、悩みがなぜ解決したのかと申しますと。
ちょっとした用事で東京電力に赴いたときのことです。
そこに置いてあった「でんこちゃんが教える電力節約のヒミツ」とかなんとかいうパンフレットに興味を惹かれてぱらぱらとめくってみると、そこには。
「ウォームレット(電気であたためる便座)を使っているおうちでは、便器の蓋を閉めてね。電力の節約になります」
と記されているではありませんか。


やったー! ついに便座上げるか上げないか問題はここに解決を見たのです
蓋を閉めればいい。
そうすれば電力節約になるから。そのほうがエコだから。地球に優しく生きるために。私たちは蓋をしめよう。人類は皆、便器の蓋を閉めるべき。
ありがとうでんこちゃん。あなたは私に、とても大切なことを教えてくれた。
本当に本当にありがとう!


そうだよね、考えてみれば、閉めないで開けっ放しにしておくんなら、便器に蓋がついている意味がないもんね。
それにしてもこの問題について初めて本格的に取り組んだあの日。
私は既に正解に到達していたのだなあ。感無量。


というわけで、私はその後、用を足した後、必ず便器の蓋を閉めるようになりました。
世の中にはウォームレットの類を使っていないトイレもたくさんありますので、そういうときはちょっと迷うのですが、
「たまには閉めてやらなきゃ、便器も蓋をつけてる甲斐を感じないよなあ。もしも家人に『なぜ蓋をしめるのです?』などと聞かれたときは、『ウォームレットと勘違いしました』と言えばいいや。私は蓋閉めが反射で出来る人間になりたい。そのためにも例外は許さず閉める! 閉めさせて貰う」
と自分に言い聞かせて蓋を閉めます。

問題は、たまに公共のトイレを使うと、蓋のついていない便器があることなんですが、そういうところのトイレは大抵男女別に別れていますから、安心して便座を下げっぱなしにしておけばいいし。
今年はでんこちゃんのおかげで、迷いのないトイレ生活を送ることができて、快適です。


世の中には私と同じように、便座をどうすればいいかわからず、悩んでいる方が大勢いるかと思います。
蓋を閉めればいいんですよ。蓋を閉めれば。
そうすれば、地球に優しい人間になれるんです。