私の友人に精神科医が一人います。一般人の知らないことをイロイロ知っているので、時々勉強させてもらっています。
みなさんはSSRIと聞いて、なんのことだかわかりますか?
これは新世代の抗鬱剤と呼ばれている薬でして、"Selective Serotonin Reuptake Inhibitors"の略なんです。
と言われても全然なんのことやらさっぱりだと思いますので、わかりやすい日本語に直しますと「セロトニンだけ再吸収されないようにしますから」みたいなかんじです。
鬱状態のひとというのは、セロトニンと呼ばれる脳内物質の濃度が低くなっています。ということは逆に考えると、セロトニンの濃度を濃くしてやれば、鬱も治るんじゃないの、という話になってくるわけです。
で、セロトニンというのは、脳内に放出された後、また少しずつ再吸収されるのですね。
ということは、その再吸収を邪魔してやれば、セロトニンはずっと放出されっぱなしになるので、自然と脳内の濃度が高くなって、あら不思議、鬱状態がきれいに回復、明るい気持ちでポジティブシンキング、気がつけばしつこい油汚れも綺麗に落ちてすごいわジョン!
というのがSSRIという薬の仕組みなんだよ、と友人が教えてくれました。(まあ後半がちょっと嘘ですけど)
「ということはさ」
と私は友人に確認しました。
「セロトニンの濃度が低い鬱状態のひとの脳内っていうのは、終業後のサラリーマンが夜遊びしないでさっさと帰宅してしまう街みたいなもんなのね。サラリーマンがみんな家に帰っちゃうから繁華街が寂しくなって、消費行動が抑制され、景気が低迷するわけだ」
「うーん、まあそんなもんかな」
ということは。
SSRIを服薬した人間の脳内というのは。
「いかん、消費行動が抑制されたこのままの状態ではデフレスパイラルが続き、日本の景気はますます低迷するばかりだ!」
と苦悩する総理はついに景気回復のために一大プロジェクトを立ち上げました。
そんなことは露知らず、国民はいつものように
「いってきます」「いってらっしゃい」
と声をかけあって、通勤したり通学したり。
ところが彼らが「ただいまー」と帰宅すると。
「な、なんだこれ。家の扉が開かないぞ」
いつの間にか扉の鍵は政府の極秘エージェント(たぶん忍者)によって作り変えられてしまったのでした。
「くっ、このままでは家に入れない。そうだ、鍵屋に連絡しよう」
と携帯電話を取り出す国民。
「あなたがおかけになった電話番号は現在使われておりません……」
「なにぃーっ、どうしてだ。よし、別の鍵屋だ」
「あなたがおかけになった電話番号は現在使われておりません……」
「ええっ、ここも? なら更にこっちだ」
「しつこいなあ、この番号も使われてないの。てゆーか、今夜一晩、どこの鍵屋も電話通じないの。わかったらさっさと諦めな」がちゃん
「な、なんだ今の……」その後も国民は鍵をあけてくれそうなありとあらゆる場所に電話をかけるんですが、なぜだか全然繋がりません。
「どうすればいいんだ……家に入れないとなると、おれは今夜いったいどこで過ごせばいいんだ?」
というわけでその晩の繁華街には家に帰れなくなった哀れな国民がいっせいに押しかけ、街はひとで溢れ、すべてのホテルが満員御礼、そればかりかすべての24時間営業のレストラン、コンビニ、カラオケボックス、飲み屋なども押すな押すなの大盛況、その後もSSRIプロジェクトは定期的に繰り返され、国民の消費行動はいやでも活発化せざるを得ないので、景気は強引に回復するのでした。
みたいになっているってこと?
それがSSRIのやり方なの? なんかちょっと無理矢理過ぎない?