ある学校で、ある母親が
「給食費を払っているのはこちらなのだから、給食のときに子どもに『いただきます』と言わせるのを止めさせて欲しい」
と申し入れ、それがラジオで紹介されたのをきっかけに、一部で話題になっているそうです。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/katei/news/20060121ddm013100126000c.html
http://d.hatena.ne.jp/TERRAZI/20060122/p1
その母親が非常識とか、いただきますは植物や動物の命をいただいている感謝を示す言葉なんだとか、文化がこうやって失われていくとか、そういう話を私はしません。
他所で既にされてますから。
私が思ったのは
「あー、この母親は損得のワカラナイひとだ」
ということでした。
つまりね。
いただきますが何故大事な言葉かとか、そういう問題は全ておいといて、ここに二人の男性がいるとします。
片方は、親のしつけにより、食べ物を目にすると反射的に「いただきます」を口にするAさん。
もう片方は、自分が「いただきます」を言うべきだと納得できないと言わないBさんだとします。
たとえば、A、B、Cの三人でお金を出し合って、Cさんがコンビニに買出しに行き、戻ってきて買ってきたアイスを配ったとします。
「給食費払っているからいただきます言わない理論」に従ってBさんは無言で食べ、Aさんは反射的に「いただきます」と言う。
Cさんはどちらの男性をより好ましく思うか。
そりゃあAさんのほうでしょう。
Aさんの「いただきます」がただの反射だとしても、特にCさんに向けたものでなかったとしても、それは変わらない。
反射であってもそういう言葉がもらえることは、もらえないよりは嬉しいんですから。
これでもしもCさんが可愛い女の子で、Aさん、Bさん二人ともがひそかに好意を抱いていたとしたら……明らかにAさんはここで一歩リードです。得。
その後その三人でレストランに行けば、Aさんが
「いただきます」
といったのを見て、更にCさんは
「すてき。Aさんはきちんとしたしつけをされて育ったのね」
と思うかもしれません。
美人ウエイトレスがAさんの言葉に感動して、心を込めた接客をしてくれるかもしれません。
オープンキッチン形式なのでAさんの言葉を聞きつけたシェフが、
「感心な若者だ」
とデザートをおまけしてくれるかもしれません。
「いただきます」を口にする事で損する可能性はまずありませんが、得する可能性はけっこうあるのです。
あるエッセイマンガで、
「息子をモテモテの男に育てるために、何かあったら即座に相手の目を覗き込んで
『大丈夫?』
と言わせるようにしつける」
というネタがありましたが、そういうことですよね。
自分が転んだときに脇にいる男の子が「大丈夫?」と真剣な顔でこちらを覗き込みながら言ってきたら、それだけでフォーリンラブしてしまう女子は実際いるでしょう。
世の中には「反射的に口にできた方が得なフレーズ」というのが結構あるのです。
「こんにちは」
「ありがとう」
「ごめんなさい」
「いただきます」
このあたりのフレーズは、反射的に口に出来るようになったほうが、明らかに得。
好感度が高い人間になれます。
もしかすると、
「『いただきます』だの『大丈夫?』だので、ほんとに得があるのか?」
という意見があるかもしれません。
確かに、これらのフレーズを口にすると必ず好感度が上がるわけじゃないかもしれない。
ですが、どうせそんな言葉を口にするのは、大した手間じゃないわけです。
何十回も口にしてその中の数回でしか好感度が上がらないとしても、それでじゅうぶんじゃないですか。
「いただきます」くらい、言ったっていいじゃん別に。
金払っている立場で口にしたからって、何かを損するわけじゃないじゃん。
言えないよりは言えたほうがいいんだから。
食事は金出せば買えるけど、好感度を金で買うのは難しいんだぞ。
だったら日頃からそのくらいの反射を仕込んでおいてくれる学校はとても「親切」だと言えるんじゃない?
頭下げれば蔵が建つとか、そんなコトワザもあるもんね。
というふうに私は思うんですけどねえ。