実家より、母から電話。
「あんたの中学の同級生のEちゃんとGくん、結婚するんだってね」
「知ってる。招待状もらったし」
「あら。行くの? 結婚式」
「行く」
「えーっ、だってあんた、結婚式に着ていけるような服、持ってるの?」
あるよそのくらい、と私は言いかけましたが、ふと思いついて、別の言葉を口にしました。
「……もし持ってないと言ったらどうするの?」
「えっ」
「持ってない、困ると言ったら、お母さんはどうしてくれるの? もしかして、買ってくれるの? だからそんなことを聞いてくれたのね?
そうじゃなきゃ、あたしの服の有無を確かめる必要なんて、ないものね。ありがとう、なんて優しいのかしら。お母さんの真心が伝わってくるわ」
「えーっと、そういえばあたし、用事があったんだった、ゆっくり電話してる暇ないわー。ごめんごめん、もう切らなくちゃ。それにあんた、考えてみれば今まで他の結婚式に出たことあるから、服くらいあるよね。なくても自分でなんとかできるしネ! てゆーか、自分でなんとかしてよネ! それじゃまた!」
がちゃん。
電話は切れました。
母の真心は、確かに私の胸に伝わってきました。