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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

ある種のドッペルゲンガーみたいな〜その2〜

はじめに

一年以上前に書きかけで放置してしまったがゆえに
「もうこれの続き今更いいよね」
と思い始めていたのですが、やはりそうでもないようで
ドッペルゲンガーの話の続きはどうなったのでしょうか」
というメールその他をいただきましたので、続きを書かせていただきます。
なお、私の当時のサイトを発掘されたりしたくない願いを込めて、事実はいつものごとくそれなりに改変してございます。
あらかじめご了承ください。
ちなみにその1はコチラでございます。

本文

さて、私が妹のシロイ・サイキ(仮名)に助けを求めようと考えたのには、理由がございました。
というのは、我が妹サイキは昔からかなりのネット力(今作りましたこの単語)を誇るツワモノであったのでございます。
複数のサイトを精力的に運営してどのサイトでもアクセス数を着々と集め続ける、私にとって最も身近なネットカリスマ、それがシロイ”電脳ミストレス”サイキだったのでした。
そんなサイキは、自サイトの内容をよそにパクられたなんて経験もきっちりございまして、そういったトラブル解決の経験もきっちり持ち合わせているのでございました。


私の話を聞いたサイキはひとしきり電話口で笑い声をあげた後、私の困惑を正面から受け止めてくれました。
「それは……笑えるけど、確かに困るねえ。パクリってのはいかんよ。うむ」
「いやまじでこれはご冗談ではございませぬよ。なんとかしてくださいサイキ様。電脳世界といえども私は自分の人格に関して誤解されるのは嬉しくないんですよ! 性生活をテーマにしたポエムとか、私あと100年生きても絶対書けないんで、そのあたりの羞恥心だけは大和撫子なんで、ほんとどうにかしていただきたいのでございます!」
「いやおねえちゃん、もうちょっと他の部分も大和撫子になろうよ。それはさておき、どうしよっかねー、うーん……ああっ、そうだ。おねえちゃんのサイトの掲示板、確かIPが公開される形式だったよね?」
「あ、はい。確かそうだったと思いますです」
「じゃあ、思いついたことがあるから、その手を使おう。ちょっとめんどくさいけど」
「めんどくさいとか言わないでください! そもそもあなた様がわたくしめのサイトの在り処をあっさり両親に教えちゃったから私はより深く困惑しているのでありますよ!」
「人に見られて困る内容を公開すんなよ。公開する以上は誰に見られても構わない気概を持ちたまえ」
「ええ、まあ、それは正論かもしれませんが、でもほら人は正論のみにて生きるにあらずですよ?」
「それでも正論は大切よ? あ、ごめん、キャッチ入ったわ。それでは失礼!」
そこで電話はイキオイよく切れました。


サイキは私の頼みごとを引き受けてくれたのだろうか、一体彼女が何をどうやって私を救ってくれるつもりなのか全然わからなかった。
まさか妹が私を救ってくれないということもないだろうだって姉妹よ? ああでも私、子どもの頃妹をだまくらかして、お小遣い525円を巻き上げたことあったしな……今から525円返したほうがいいかな、なんなら十倍返しにすべきかな……でもあいつだって私のコーヒーゼリーを黙って食べたことがあったからオアイコだよな……いやいや、でも今回の私は下手に出るべき立場だしな……そもそもコーヒーゼリーのほうが安いしね……そうだ妹から借りっぱなしになっている『レベルE』の単行本もそろそろ返すべきだよね。
私はちょっと呆然として受話器を見つめながら、そんなことを考えていました。


数日後。
私は訪れるものなどほとんどいない自サイトの掲示板を覗いて、のけぞりました。

投稿者: フラワー
IP: XXXXXXX
このサイトは一体なんなんですか! サイト名とバナーを○○さんのところからパクっていますよね!!
http://○○さんのとこのサイトのURL/
非常識! 信じられない。このことは○○さんに報告させてもらいますからね。

マイガッ。
なんてこったい。私の動きは一足遅かった。サイキに動いていただく前にこんなことに。
考えてみれば、うちのサイトのほうが向こうよりアクセス数少ないもんね。どう考えてもこっちのほうがパクったぽく見えるよね……ふふ、どうせ弱小さ。
いかん。そんなこと考えていたらすっかり暗くなってしまった。思い出せ自分、私のサイトは弱小だが、バナーを作ってくれた人は、けっこう大手サイトだったじゃないか! あの人の著作権だけは明確にあるじゃないかっ。自分を信じるな、私を信じてくれたバナー作者さんを信じろ。うん。


というわけで気を取り直した私は、掲示板に以下のごとく書き込みました。

投稿者: シロイ
IP: YYYYYYYYY
はじめましてフラワーさん。当サイト管理人のシロイでございます。
先ほど該当のサイトを確認させていただきました。確かにサイト名とバナーが同一ですが、私が該当サイト様のサイト名とバナーをパクったというわけではございません。
当サイトは20xx年に開設されており、該当サイト様よりいささか古うございます。
また、問題となっておりますバナーは、私が▲▲様に依頼して作成したいただいたものであり、当時の経緯のわかるメールも手元にございますし、▲▲様のサイトにはこれまで作成したバナー一覧が公開されておりますので、そちらをご確認いただければと思います。
▲▲様のサイトURLは下記となります。
http://バナー作成引き受けてくれた▲▲様サイトのURL/


フラワーさんからさらにレス。

何しらばっくれてんの。ふざけんな。もう○○さんのサイトにてめーのこと教えてきたからな! パクリ野郎!!

それを受けて、私は○○さんのサイトの掲示板も確認してみました。
どうやらフラワーさんは○○さんのサイトに最近やってきた常連らしく、○○さんのポエムや日記を賞賛する書き込みをいくつか残しています。
そして、最新の書き込みはこんなかんじなのでした。

投稿者: フラワー
IP: XXXXXXX
こんにちは○○さん。今日私はとんでもないサイトを見つけました。
シロイという管理人の運営するサイトなんですけど、なんと○○さんのサイト名とバナーをそのままパクっているんですよ! しかもこっちが指摘してもしらばっくれるし!
http://シロイサイトのURL/
ほんとに腹が立ちます。

ああああ。
既に火種は撒かれていたか……
私はモニタの前で深いため息をつきました。
これからきっと○○さんは私に「こっちがオリジナルよ」と言ってくるだろうな。その相手はだるいな、そう思いながら。
ところが。
数時間後、○○さんのサイトは、跡形もなく消えていました。


「ちょっ、サイキさんてばスーパーハカー! 他人のサイトをハッキングして消すほどの技術をお持ちとは思いませんでした! おみそれいたしやした」
私が電話口で興奮してまくしたてると、サイキはけらけらと笑いました。
「おねえちゃん、イイトシなんだから身近なスーパーハカーの実在は疑おうね。あれはね、むこうが自分から姿を消しただけ」
「ええっ、なんで、どゆこと?」
「おねえちゃん鈍いな、まだ気づいてないわけ? フラワーは私だよ」
「へっ」
私が間の抜けた声を出すと、妹は上機嫌で続けました。
「『愚かな味方は賢い敵より始末が悪い』ってことっすよ。
○○さんはさー、フラワーさえいなければのらりくらりと交わしながらいろいろごまかせたと思うけど、フラワーが勝手に頭に血を上らせて暴れまわったおかげで、おねえちゃんは早々にバナー作成者さんの名前を出して、覆しようのない証拠を提出したじゃん。
サイトを見比べて、おねえちゃんのコメント見れば、どっちがどっちをパクったかなんて、誰からも一目瞭然でしょ。よほどの馬鹿じゃなきゃ。もうああなっちゃったら、○○さんがどれほど上手く立ち回って事態を小さく収めようとしたって、無駄でしょ。フラワーがいる限り、どんどん泥沼化するだけだもん。○○さんも満更バカじゃなかったから、それに気づいたんでしょ。
だったらあとは、三十六計逃げるに如かずってやつよねー」


「おお……私の妹って賢いな」
「ふふ。ほんとはおねえちゃんに自分でフラワー役をやってもらおうかと思ったけど、IP割れる掲示板だから、そのままじゃ自演ばれるしねえ。
串の通し方教えようかと思ったけど、そもそも串通した書き込みは見るやつが見ればすぐわかるし、それがばれたらやっぱり自演に見えるし。だから私があの役やったわけ」
「そうだったのか。つか、先にこれからナニするつもりか教えてよ。マジでびびったんだけど」
「教えたら、おねえちゃんの緊迫感が薄くなるから、リアリティのあるやり取りにならないもん。おねえちゃんのびびりが本物だから、誰も自演を疑わずに済んだワケ。
敵を騙すにはまず味方からっすよー。
それにまあ……おねえちゃん、私から昔575円まきあげたし? だから、有り得ないけど誰かにナニカ言われたら、『私は姉を恨んでますから、本気で○○さんの味方をするつもりでした』って言っちゃえば別に嘘とも言い切れないしねえ」
「……覚えてたんだ、アレ。でも確か525円じゃなかったっけ?」
「いや、575円だよ。記憶改竄すんなや」
「ごめんなさい。今度返済します。あと飯おごります」
「ふむ。ま、よろしいでしょう」


というのが、数年前のテキストサイト時代にあった「ドッペルゲンガー事件」の顛末でございます。
その後、そこまでして守ったサイトを弱小ゆえにあっさり放棄したネットジプシーの私とは異なり、サイキはそれ以降も順調にネット活動を続け、雑誌の記事執筆の依頼などをたまに受けたり、そのジャンルで名の通ったブロガー対象のイベントに招待されたりして、最も身近なネットカリスマとしてその名声を高めているのでありました。
いやはやまことに、持つべきものは賢き身内でござったなあ、あとお金はちゃんと返して家族は大切にしよう、という教訓を私はそのとき得たのでございました。
とっぴんぱらりのぷう。

あ、そうだ

この記事を読んでサイキさんのサイトを探したりしないでくださいね。
そんなことになったら私がサイキさんに怒られます。私は妹に頭が上がらないのでございますので、そこいらあたりのご配慮をよろしくお願いいたしますです。