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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

モーニングは喫茶店の醍醐味

この世知辛い世の中を離れて、ひっそりと静かに暮らしたい……
みたいな願望は、いつの世のひとも心の中にそっと抱くものだと思います。
人里離れた場所に住まう仙人とか賢者とか魔法使いとか元政治家とかの話が多いのは、そのへんの願望を微妙に反映してたりしますよね。


ところで現代人の似たような願望の一つに「喫茶店のマスター(orペンションのオーナー)」願望というのがあります。この概念はいま私が作りましたが。
忙しい情報過多な現代社会に疲れがちな私たちは、「いかにも大人な雰囲気を持った喫茶店のマスター」というやつに憧れて止まないんですよ!


憧れというのは実に多様な形をとるものですんで、
「素敵な喫茶店マスター(これはおねえさんでもよいのです)に認められて常連になる」
という比較的現実的な夢から始まって、
「ある雨の日、客が来ずに店内でマスターと二人きりになって悩み事を相談する自分、適切な言葉で慰めてくれるマスター」
とか、
「再び雨の日に二人きりになるマスターと自分、するとマスターがぽつりぽつりと若い日の悲恋の思い出を語る」
とか、
「そんなマスターの娘と恋仲になる自分」
とか、
「マスターはかつて伝説の純愛ベストセラーを書いて失踪した作家だったことが判明」とか、
「そうこうしてるうちに近所に美女三姉妹のやっているライバル店出現、彼女たちの正体は怪盗」
とか、もうとにかくそのバリエーションの多彩さと言ったら。


そして憧れのバリエーションのひとつには、「ひょんなことからマスターに見込まれて店を継ぐ自分、繁盛する店」という奴もあるんですよ、たぶん。
要するに、私が言いたいのは、現代には「喫茶店マスターになりたい」と思っているやつらが大勢いるはずだ、ということなんですけどね。(長い前フリだったなあ)
とりあえず、私はそうです。私は喫茶店を経営したい。
ワナビー、ワーナビー。


というわけで、こないだ友人ふたり(男1、女1)と話していたら、彼らも同じ夢を抱いていることが判明したんです。ちなみに全員同い年。もしかしたらこの願望の発生率は、生まれ年と関係しているのかもしれません。


しかし考えようによってはこりゃあ素晴らしいシチュエーションですよ?
だって、私たちの「喫茶店マスターになる」という夢を阻んでいるものは、たった一つ、マネーなんですから。
金の問題さえなきゃ、というか、喫茶店経営というのがタダで行えるものであるなら、日本全国の喫茶店の数は今ある数の五十倍くらいにはなると私は信じています。


三人寄れば文殊の知恵じゃないけど、社会人が三人寄せ集まれば、ちっとは金の問題もなんとかなりそうな気がするじゃあないか。
なにより三人の喫茶店マスター志願者がいるのです。その情熱を寄せ集め、ひとりがみんなのために、みんながひとりのために頑張れば、喫茶店くらいなんとかなっちゃうんじゃねえの?
よし、我々の夢のためにマネーを出し合うんだ、と私は心ひそかに意気込みました。


「へー、じゃあ三人で共同経営しようか」
とさりげなく持ちかける私、笑顔で答える彼ら。


私は自分が抱く喫茶店の夢について公表しました。
本棚を置いて自分の蔵書の中でも猟奇色を感じさせない見栄の張れるものを選びぬいて店内に置くとか、季節の花を週替わりで飾る、とかね。そんなの。


それを受けて、彼らも自分たちの夢を公表しました。
「わたしは自分のチェロを店内に飾るよ」
「だったら、ぼくは格闘技関係のものを置くな。選手のポスターとか。そしてプロジェクターも置いて、ナイスファイトを上映して、店を格闘技の殿堂にします」


でっかい本棚とチェロの置かれた格闘技の殿堂……


えーと。
「船頭多くして船山に登る」っていうことわざがあるじゃないですか。
あれって、「船頭が多いと、船は登山という奇跡すら起こせるんだぜ! 友情パワー」という意味ではないらしいですよ。