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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

オフィスでスリルとサスペンス

せっかく家からオフィスまではハンカチを忘れずに持ってきているのに、自席からトイレに行くときはなぜかそのハンカチをデスクに置いてしまう!
そんな経験はございませんか?
自分のうかつさにがっかりしながらびしょびしょの手を他人に見られないよう、用心しながらこそこそと自席に戻り、
「あー他人にこんなとこ見られたらハンカチを使わない野蛮人だと思われるー。ほんとは持ってきているのにい」
などと考えてゆううつになったりしませんか?
そんなお悩みをお持ちのあなたに朗報です!
自席からのハンカチ忘れを防ぐ画期的なシステムが開発されました。


……で、ここまで来ればわかると思うんですけど、持参したハンカチ*1を持たずに毎回トイレに行ってしまう間抜けというのはずばり私のことで、「画期的システム」とやらの開発者も私です。シロイ“マッチポンプ”ケイキと呼んでください。
ほんでまあ、私と同様のお悩みをお持ちのみなさんのために、システムの解説をいたしまする。


まず、私はなぜ、持参したハンカチをデスクに置いたままトイレに行ってしまうのか?
理由は簡単で、私は常に目の前のことにばかり神経が集中してしまう単純ソボク構造の人間だからです。
なので、トイレに行こうと思ったとき、私の頭にあるのは、自席からトイレまでの「行き」の道のり(ってほどのキョリではない)のことだけで、「帰り」のことはないわけです。
そして、用を済ませた後に手を洗ってその手をハンカチで拭くというのは「帰り」に含まれることなので、もう全然考えてないし考えられない。とりあえず、
「祭りの後の出来事なんて知るもんか。おれは今目の前の祭りを楽しみたい。それだけだ」
みたいな表現をしてみるとわりとカッコイイ気がしました。(いやそれはどうだろう)


てことはですよ。
トイレまでの「行き」の過程の中に、ハンカチを必ず使用する局面が含まれればいいわけですよ。そうすれば私は忘れずにハンカチ(とゆーかハンドタオル)を携帯することができるでしょう。
それでは、どうすれば「行き」の過程の中でハンカチを用いることが出来るか?


つーわけで、私は毎回、職場でトイレに行くときは
「犯罪者ごっこ
をしています。
犯罪者だから、現場に指紋を残しちゃいけないんです。指紋を残さないためにはもちろん、手袋をするのが一番いいわけですけど、当然私は仕事中は素手ですから、そこでハンカチを使うわけですよ。


右手に持ったハンカチでドアのノブを掴んで開ける。余計なものを触らないように気をつけ、触る必要のあるものはハンカチ越しに触れる。間違って素手でどこかに触れてしまったときは、ハンカチで指紋を拭き取る。
これをトイレへの「行き」で毎回やることにすれば、自然とハンカチを持ち歩かざるを得なくなります。


この遊びを存分に楽しむためには、脳内犯罪シチュエーションをその日の気分で変えることをオススメします。
おしとやかに振る舞いたいときは
「今日の私は古銭蒐集家のコレクションを狙う泥棒です」
という気分になりましょう。自然と動作が控えめになり、足音なども静かになります。


「あの上司(あるいは同僚、あるいは取引先)ブッ殺す! と言ったときは既にブッ殺してるんだぜ」
という気分のときは、ターゲットはトイレにいる最中だと仮定して、そっと忍び寄ってみましょう。
そこで更に、殺人者らしく、
「足取りには確かに殺意が秘められているんだけど、目撃者に不審を抱かれないよう、表情はあくまでにこやかに自然にキープ」
みたいな高度な演技を心がけると、遊びの味わいはいっそう深くなります。


「親友の秘密を握った卑劣な恐喝者の家に忍び込んで証拠となる写真を破り捨てるために、一度は封印した空き巣破りの技術を再び使うことを決意した元凄腕の怪盗」
「亡き父の遺した絵画や宝石を盗む美人三姉妹怪盗の長女(普段は喫茶店経営)」
「オーケストラの演奏を台無しにした無能なフルート奏者を殺して、美味しく料理した被害者の肉を客に振る舞う知的な快楽殺人者」
などなど、演じるべき役割は無数にあります。


この遊びのデメリットとしては
「……あたしってもしかしてすげー馬鹿? いや後ろにクエスチョンマークつける必要もなくすげー馬鹿!」
みたいな気持ちが時折ふつふつと胸の奥からこみ上げて来ちゃう可能性があるよねってことなんですけど、そんなものは見ないふりをしましょう。大丈夫、自己欺瞞の経験のない人間なんていません! だったらそこにさらにちょっとした欺瞞を重ねてみるくらい、なんてことないじゃありませんかー?
しかもこれでハンカチ忘れが防げるんだぜ? なんて素晴らしい、いいことづくめだ!


というわけで、みなさんにもこの「犯罪者ごっこ」の素晴らしさが、じゅうぶん判って貰えたのではないかと思います。
無味乾燥なオフィスワークの日常に突然もたらされる非日常を、たっぷり楽しんでみましょうよ!
オフィスでの「犯罪者ごっこ」を、どんどん流行らせていきましょう。




ああ、ただし、この遊びに興じている最中に、そこを同僚に見られて変人扱いされるなどという不利益が生じても、当方は一切関知いたしません。
そもそも、真に優れた犯罪者は目撃されてもさりげなく振る舞って、相手に不審を覚えさせないようにするべきですし、みだりに目撃されるべきではありませんからね。
それでは皆さん、素敵なワーキングタイムを!

*1:実際には私が愛用しているのはハンドタオルで、これはかさばるためにポケットに入れておくのに不向きなので、だから余計忘れやすいのですよ。