wHite_caKe

だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

あなたの身近なオーソリティ

セキゼキさん(仮名)から、ひさしぶりに連絡が入りました。
最近、彼は多忙な時期が続いた後、体調を崩して、検査入院していたのです。
「シロイ、今ちょっと時間いい?」
なにその深刻そうな声。検査入院したひとがその直後にこんな声を出すなんてまさか……!
「どうしても気になることがあって。こういうときに頼れる人間って、シロイしか思い浮かばなかった」
えーっ、なんだろう。私にしか頼れないことって何かあるだろうか?


「あのさ、『ブラック・ダリア』って映画あるじゃん。あれの宣伝みてたら気になって観に行こうかなって思い始めたんだけど、彼女と一緒に観ても平気なタイプの映画かな? なんか実在の殺人事件がもとになった話らしいけど、特に連続殺人てわけでもないのに、この事件はなんでこんなに話題になったの? どんな話なの? どのへんがこの殺人事件の特別なところなの?」
「……えっと。私は映画好きだし、ブラックダリアも気になってはいるがしかし! 映画の話を聞きたいなら、私以外にも頼れる人間はいるだろう?」
「だって、おれが気になったのは映画もだけど、事件の話もなんだよ! 話題になる殺人事件といったら連続殺人事件ってイメージがあるのに、なんでブラック・ダリア事件はここまで話題になったのかとか、そういう話聞きたいけど誰に聞いていいかわからないな、ネットで調べてもよくわかんないなと思っていたら、シロイの顔が脳裏に閃いてもうこのひとしかいないなって! おれの周りの殺人博士かなって!!」
「誰が殺人博士だって?」
「シロイ」
「私はちょっとソレ系の話に詳しいだけで、特に博士ってわけじゃないぞ。そしてその称号は決して私にとって名誉なものではない! 取り消せ」
「でもおれの周りではその手の話に一番詳しいのはシロイなんですけど」
「うっ」
「そしてその称号を取り消したとしても、シロイが名誉なものじゃない趣味を持っている事実は消せないんじゃ?」
「うううっ」
「だからさあ博士、ブラック・ダリア事件について教えておくれよう」
「……くっ。仕方ないなあ。それではまずファーストステップとして『アメリカ文学界の狂犬』エルロイの話から始めようか……」


みたいな会話が交わされた秋の夜。
いやあ、どんな理由であるにせよ、友人に頼って貰えるのは、本当に名誉なことですよね!? もう無理矢理にでもそう思うことにします。