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だらだら書きますので、だらだら読んでもらえるとありがたく。

コミュニケーションの多様性と片づけることで心のバランスをとりたいの

家族と過ごす団欒の時間、みんなでテレビを見ていたら急にラブシーンが……!
突然空気が気まずくなり、その気まずさに耐えかねた人間が次々とテレビの前という戦場を離脱してしまい、やがて家族崩壊の危機が。
そんな経験はありませんか?
そしてそんな経験をお持ちの皆さん、その対策に苦慮したことがあるのではありませんか?


私は最初、あれは父なりの気まずさ対策なのだと思っていました。
キスシーンなどが開始されると同時にテレビに向かって、「あ、こら、止めなさい! 何してるんだ、けしからん」などと話しかけるのは。
シャイなダディの照れ隠しかな、って。
しかし、それがどうやらそうじゃないかもしれないのです。


朝の連続ドラマ小説に昔、『こころ』っていうのがあったんですよ。
『こころ』は好きじゃない、とこぼしながらも毎朝見てしまう父。
そして、主人公のこころが朝ひとりで起きられずに母親に起こされるシーンになるたびに
「お前はまったく! そんな歳になってもまだひとりで起きられんのか」
と憤っていました。


こころはのちにバツイチ子持ちの男性と結婚するのですが、ひとりでは起きられず、寝坊してしまいます。慌てて飛び起きた彼女は、旦那の連れ子に「今頃起きたの?」と冷笑されるのでした。
そう、父はそのとき、画面に向かって誇らしげにこう言いました。
「そらみろ。おれがあんなに言ってやったのに、お前がそれを聞かないからだぞ」
と。


もしかするとこのひと、シャイなあんちくしょうでもなんでもないんじゃないの?
ただ単にテレビの中のひとと会話してるだけなんじゃないの?(一方通行だけど)
という疑惑がそのとき私の胸の裡に芽生えたのも、無理なからぬ話と言えましょう。


そういえば、一度彼がキスシーンに差し掛かっても黙っていたことがありましたっけ。
「どうして今日は黙っているの?」
私が尋ねると父は、
「だってあのふたりは夫婦じゃないか」
と優しく答えたのでありました。


そこで思い出したのですが、父はカーナビとも会話していました。
カーナビ「次は右折です」
父「あ、そんなこと言ったってあなた。すまん、おれ今ちょっと曲がり損ねてしまった。ほんと申し訳ない」
――カーナビの画面にルート計算中の表示――
カーナビ「三百メートル先で、右折してください」
父「おお、そう言ってくれるか。ありがとう。あんたは優しいな、おれを許してくれるんだな」
といった具合に。
そして、自宅に無事到着したときにカーナビが
「運転お疲れ様でした」
とねぎらいの声をかけたとき、父は感極まったように
「ありがとう。カーナビさんは優しいなあ。家族は誰もそんなこと言ってくれないのにな」
などと口走ってしまうのでした。


そしてそんな父を冷笑していた私も、うっかり寝言でカーナビと話し込む始末
血は争えないってこういうことなんでしょうか。


あれ待てよ? 通常の人間達にはコミニュケーションをとれない相手と積極的に会話をすることが可能な一族……それってまるで、まるで……
というわけでシロイ家というのは現代におけるシャーマンの家系なのだということが、みなさんにもご理解いただけたかと思います。